本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ガートナー ジャパンの一志達也 シニアプリンシパル アナリストと、富士通の阪井洋之 執行役員常務の発言を紹介する。
「これからは何事も議論の中にデータを持ち込もう」
(ガートナー ジャパン 一志達也 シニアプリンシパル アナリスト)
ガートナー ジャパンの一志達也 シニアプリンシパル アナリスト
ガートナー ジャパンが先頃、年次カンファレンス「ガートナー データ&アナリティクス サミット 2019」を都内で開催した。同社のシニアプリンシパル アナリストで今回のカンファレンス・チェアを務めた一志氏の冒頭の発言は、そのクロージング基調講演で、ビジネスパーソンにおけるデータやアナリティクスの利用法について述べたものである。
講演のテーマは、「次の年代を生き抜くために、アナリティクスを戦略的に活用し、データに基づいて活動する」。同氏の話は、企業におけるリーダーの在り方や人材活用、働き方に対する意識など広範囲に渡ったが、筆者はビジネスパーソンにおけるデータやアナリティクスの利用法に関する話が興味深かったので、ここではその利用法から3つのメッセージを紹介しておこう。
1つ目は、「情報を資産として管理し、収益につなげることができるか否かが、企業の価値に差を付ける」とのことだ。同氏は、「データを活用すれば既存のビジネスに役立つとともに、さらに新たなビジネスの創出にもつながる。その上で私が強調しておきたいのは、それをスピーディーに行動することが重要だということ。これからの時代はスピード勝負だと肝に銘じていただきたい」と訴えた(図参照)。
図:データやアナリティクスの活用に向けた一志氏のメッセージ(出典:ガートナー ジャパンの資料)
2つ目は、「企業はこれからデータやアナリティクスを活用して、不祥事などを起こすことなく正しく行動することが求められる」とのことだ。同氏は、「どんな情報もすぐに広がっていく時代において、企業にとって不正な出来事が発覚すれば、それまで築いてきた信用は一瞬にして失われてしまう。そうしたコンプライアンスやガバナンスの観点からも、データやアナリティクスを有効活用していただきたい」と訴えた。
そして3つ目は、「皆さんそれぞれが何事においても感覚的におかしいと感じたら、感覚だけに頼るのではなくデータやアナリティクスを利用していただきたい」――と。冒頭の発言はこのコメントに続いて出てきたものだ。「議論の中にデータを持ち込む」とは、感情的なやりとりではなく、データとアナリティクスの結果も見据えながら事実に基づいた的確な議論をしようということだろう。この表現の仕方が印象深かったので、今回「明言」に取り上げた。
最後に、同氏はこう訴えた。
「かつて黒船がやってきて大砲の威力を見せつけられているのに、未だにやりや刀で戦っていても勝ち目はない。データやアナリティクスを活用しないのは、やりや刀で戦っているのと同じこと。時代が変わったことを認識していただきたい」
筆者も同感である。これからはデータやアナリティクスをもっと「攻め」に対して貪欲に使うべきだろう。