Revolut、Deliveroo、TransferWiseなどの欧州のスタートアップがユニコーン企業となったサクセスストーリーは、欧州大陸に健全なイノベーション精神が存在していることを証明しているかに見える。しかし、コンサルティング会社のMcKinseyが発表したレポートによれば、欧州はもっと成果を挙げられたはずだという。
欧州のテクノロジーへの投資は、2018年に過去最高の230億ドル(約2兆5000億円)を記録したが、レポートでは、最先端のテクノロジーやデジタル化といった、本当の成長につながる可能性のあるイノベーションの分野はほとんど顧みられていないと指摘している。
McKinseyのシニアパートナーKlemens Hjartar氏は、米ZDNetの取材に対して、欧州企業は機械や建物のような目に見える資産に投資する傾向が強く、これは製造業に強い欧州の伝統を反映しているのかもしれないと語った。
しかし同氏は、「私たちは、欧州がイノベーションの次の波で最前線に立つには、データやソフトウェアのような目に見えない資産への投資が重要だと認識すべきだ」と話す。
McKinseyのアナリストによれば、ソフトウェアやデータをはじめとして、さらに人工知能(AI)やIoT、ブロックチェーン、量子コンピューティング、合成生物学などのデジタル技術に投資すれば、欧州の生産性は何パーセントか伸びるはずだという。
ところが、これらの重要分野の研究開発(R&D)に対する欧州の投資は、米国に比べGDP比で1.7パーセントポイントも少ない。
政府レベルの投資に関しては、この問題は比較的小さい。欧州は研究開発に対する公的投資がもっとも多い地域だ。しかしHjartar氏は「欧州企業の研究開発投資は、それに比べはるかにシェアが小さい」と指摘する。
ソフトウェアやコンピューターサービスの研究開発費の欧州の割合は、全世界の投資の約8%にすぎない。「しかし、イノベーションの次の段階に進むには研究開発が必要だ」と同氏は言う。
欧州の研究開発に対する民間投資は、全世界の投資額の19%にすぎず、中国の24%や米国の28%に比べ大きく後れを取っている。その結果必然的に、イノベーションやデジタル変革の成功についてはその2国が欧州よりも先行している。
そのことは、欧州のスタートアップが10億ドル規模のユニコーン企業になるのに苦労していることからも分かる。何社かの例外的な企業がスポットライトを浴びているものの、全体として見れば、欧州のユニコーン企業の出現率は米国よりかなり少ないようだ。