AccentureとMicrosoftの合弁会社として設立されたAvanadeは、創業以来1200社超の企業のデジタル化を支援してきた。日本法人の代表取締役を務める安間裕氏は2014年5月の就任から2020年で6年目を迎える。同氏に2019年を振り返ってもらうとともに、2020年の戦略について聞いた。
安間氏:2014年5月に代表取締役へ就任してから6年目になる。その間にビジネスは3~4倍に成長した。戦略上のキーワードは、大きく「グローバル化」と「デジタル化」の2つ。(日本法人の)アバナードでは2010年辺りからデジタルを推進し、ようやく時代が追い付いてきたという印象を持つ。
日本の人口が減少する中、世界の市場に打って出ようとすると、現地法人との協業や、グローバルに展開できる商品作りが必要になる。ERP(統合基幹業務システム)を例に取ると、ブラジルに導入するのと、クロアチアに導入するのとでは、法制度や商習慣の違いなどから方法が大きく異なる。そうした中では、世界で共通するコアとなる部分が何かを考えないといけない。
2019年はクラウドやIoT、ロボティクス、エッジコンピューティングが当たり前のように語られるようになった。RPAは技術的に見ればそれほど難しいものではないため、各製品のポジショニングが難しくなってきた。
デジタル変革(DX)のおかげで、経営者がデジタルに対して本気で考えるようになった。IT投資への考え方がボトムラインを意識したコスト削減から、トップラインを伸ばす売り上げの向上に変わってきた。「ITはコストではなく投資。もうかるならいくらでもやる」というマインドセットになった。
その一方で、日本は自ら率先してDXを推進する経営者がまだまだ少ない。CDO(最高デジタル責任者)を設置したら全てが片付くわけではない。経営者がDXの重要性を強く認識し、CDOと一緒になって考えていかなければならない。
また、人工知能(AI)などの活用が進むに従って、デジタルシステムの公正性や説明責任、信頼性など、その倫理観(デジタル倫理)が求められるようになってきた。リクルートキャリアが運営する就職情報サイト「リクナビ」で、就職活動をする学生が企業の内定を辞退する可能性を本人の同意なしに予測・販売していた問題があったが、多くの企業によって対岸の火事ではなくなった。
クラウドへの移行では、アーキテクチャーの“デカップリング”が必要になる。つまり、従来の密結合されたアーキテクチャーを切り離し・分離することで、段階的なクラウドへの移行を可能にする。そのアーキテクチャーを設計することが重要だ。
クラウドの良い点は、経営的に見て、変動費として扱えることにある。オンプレミスのシステムでは固定費として資産を計上しなければならず、事業が儲かっていないときは大きな負担になる。IT投資の仕方が大きく変わる。
アバナードでは、アジア太平洋地域でのデジタルイノベーションにも力を入れており、2019年5月にはデザイン主導型のシステム開発を実践するスタジオを日本オフィス内に設置した。人間を中心としたエクスペリエンス(体験)や市場投入時間の短縮、デジタルトランスフォーメーション、収益の向上といったテーマを掛け合わせ、ビジネスを差別化する革新的なアプリを迅速に構築することを目的としている。
「Innovation as a Service」という言葉を掲げ、それを実現するための組織と能力を考えないといけない。デジタルの時代が本格的に到来し、「デジタル」という言葉が当たり前になったときには、アバナードの社員全員が“デジタルイノベーター”と呼べるようにしたい。
アバナード 代表取締役の安間裕氏