フランス政府とドイツ政府は、米国や中国の大手クラウドを欧州のやり方で管理し、欧州連合(EU)のプライバシー法制と米クラウド法(CLOUD Act)の潜在的な衝突に備えることを目的としたプロジェクト「GAIA-X」の取り組みを進めている。
ドイツの経済エネルギー大臣Peter Altmaier氏とフランスの経済財務大臣Bruno Le Maire氏は、現地時間6月4日にこのプロジェクトの進捗や今後のステップについて示した。このプロジェクトに関する話題は、2019年10月にドイツで会合が開催された頃から議論されていた。
今後はベルギーにGAIA-X Foundationと呼ばれる非営利組織が設立され、会員企業はプロジェクトが掲げる、データ主権、データの可用性、相互運用性、ポータビリティ、透明性、公平な参加などの原則に従う。GAIA-Xは、プロジェクトの目的や技術的な設計に関する5つの文書を発表している。
EURACTIVの報道によれば、Le Maire氏はこのプロジェクトの本質は欧州の主権だと述べた。同氏は、「私たちは中国ではない。私たちは米国でもない。私たちは独自の価値観を持つ欧州諸国だ」とした。
Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleなどの米国の大手パブリッククラウド企業にもGAIA-Xに参加する道は開かれているが、その場合はGAIA-Xの原則に従う必要がある。
EURACTIVによると、MicrosoftはGAIA-Xプロジェクトに対する支持を表明しており、プロジェクトへの参加を検討している。ただしLe Maire氏によれば、会員プロバイダーは、顧客のデータが米クラウド法などの法律の対象となる場合には、顧客に通知しなければならないという。
米クラウド法は、法執行機関が国境を越えてデータにアクセスできる方法を規定する法的枠組みを作るものだ。2018年に成立した。
GAIA-Xの創設メンバーには、さまざまな業界の22社の企業が含まれている。具体的には、Amadeus、Atos、Beckhoff、BMW、DE-CIX、Deutsche Telekom、Docaposte、EDF、Fraunhofer、German Edge Cloud、Institut Mines Telecom、International Data Spaces Association、Orange、3DS Outscale、OVHcloud、PlusServer、Safran、SAP、Scaleway、Siemensだ。
POLITICOによると、これらの会員企業はGAIA-X Foundationに合わせて年間150万ユーロ(約1億8000万円)を拠出する。会員企業は、GAIA-XにAmazonやMicrosoftなどと競争できるサービスを作ることを期待しているわけではなく、欧州で新たなクラウドビジネスが成長するための基盤になることを望んでいるようだ。
Orange Business Servicesのクラウド事業幹部であるCedric Prevost氏は、POLITICOの取材に対して、GAIA-Xは、サービスを購入するユーザーがサーバーが置かれている場所に基づいて検索、選択できるようにする「既存サービスのリポジトリー」を目指していると述べている。
GAIA-Xのサービスは2021年に開始される予定とみられている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。