日本マイクロソフトは6月16日、開発者向け年次イベント「de:code 2020」(6月17~30日開催)のデジタルイベント化に伴い、仮想空間でイベントを体験する「バーチャルイベントプラットフォーム」を導入することを明らかにした。開発を担当したFIXERは、7~12月にバーチャルイベントプラットフォームのパッケージ化を予定している。利用料金は「規模に応じて異なるが数万人規模なら数千万円から」(代表取締役社長の松岡清一氏)を予定している。
2020年は新型コロナウイルスの影響で、展示会施設やホテルの宴会場などを使ったイベントの開催が見送られ、オンラインへの移行を余儀なくされたものも多い。日本マイクロソフトもde:code 2020のデジタルイベント化を4月に決定し、約2カ月でセッション収録から後述するプラットフォームの開発に取り組んだ。セントラルマーケティング本部長の白戸順子氏は「自粛期間のため、多くのスタッフは自宅などからコンテンツ動画の作成や共同編集を行い、新しいコラボレーションを実践した」という。
なお、6月16日10時半時点でde:code 2020に1万4000人超が参加登録している。従来のde:code開催時は2000人強が訪れたことを踏まえると、オンラインイベントを実施する利点は大きい。
ラウンジ会場では実際の参加者がアバターとして登場するが、de:code 2020は1万4000人以上が参加するため、数十人分のアバターのみ表示するように調整している(画像は全て最終調整中のもの)
バーチャルイベントプラットフォームは、Microsoft Azure上に構築された。参加者は、Microsoft、GitHub、LinkedInアカウントでサインインし、複数のアバター(分身。本稿執筆時点では6種類)から好みに応じて選択すると、仮想空間に自身のアバターが現れる仕組みだ。
仮想空間内では、現実の会場を模したラウンジ内にセッション一覧や関連動画、Twitterのタイムラインなどが流れる仕組みを施している。出展者のテナントが並ぶEXPO会場では、出展側が用意した動画配信やソリューションの情報、Microsoft Teams経由で担当者との通話もできる。アンケートの実施や資料のダウンロード機能も現時点で実装している。
出展者のテナントを訪れると、Microsoft Teamsによる担当者との対話や製品情報サイトへの遷移も行える
“仮想”登壇者によるセッション会場も、仮想空間らしくメイン画面にはスライドデータを映し出し、登壇者の映像や補足情報などを表示する複数のディスプレイを用意する。視聴終了後はオンラインアンケートも実施できるため、リアルイベントよりも観客の声を収集しやすくなる。
なお、これらの3DビューをPCで体験する際、WindowsならIntel Core i5/AMD Ryzen 5いずれかのCPUとメモリー4MB以上のPC。MacではIntel Core i5以上のCPUとメモリー4MB以上のスペックが必要になる。ウェブブラウザーはMicrosoft EdgeおよびGoogle Chromeの最新版を推奨する。iPhoneやAndroidデバイスは仮想空間の演出がない2Dビューでの参加になる。
セッション会場。3Dビューによる視聴が見にくい場合は2Dビューに切り替える方法もある。なお、de:code 2020開催期間中であれば、セッションは何度でも視聴可能だ
バーチャルイベントプラットフォームは、参加者のIDを「Azure Active Directory B2C」で管理し、視聴結果や中断した時間など利用者の行動履歴はRAWデータで格納する。Azureビジネス本部 部長の田中啓之氏は「個人情報を保護しながら、当社のマーケティング部門でも利用したい。顧客のCRM(顧客関係管理)データとの連携もFIXERと相談している」と説明し、商用利用の幅広い可能性を提示した。
また、FIXERとの共同開発について田中氏は、「同種のサービスは多数存在するが、Microsoft Azureで稼働し、B2B(法人取引)に特化したプラットフォームが必要だった。今後は他のパートナーを含めて(バーチャルイベントプラットフォームを)拡張し、新しい価値を提供したい」と語る。FIXERでもバーチャルイベントプラットフォームのパッケージ化に伴い、チャットボットや担当者呼び出し機能の強化、管理サービスやデジタルマーケティング機能の充足を目指す。2021年1月以降は、物販決済機能や仮想空間への広告表示機能なども予定している。