NTTドコモと竹中工務店、建築現場のデジタル変革に向け連携

藤本京子

2020-07-15 07:00

 NTTドコモと竹中工務店は7月14日、建築現場のデジタル変革(DX)に向けた共同検討で合意したと発表した。建築現場における「人」の活動に焦点を当てて生産性を高め、働き方の新たなスタンダードモデルの構築を目指す。

今回の連携への意気込みを見せるNTTドコモの坪内氏(左)と、竹中工務店の篠井氏(右)
今回の連携への意気込みを見せるNTTドコモの坪内氏(左)と、竹中工務店の篠井氏(右)

 竹中工務店 取締役専務執行役員の篠井大氏は、「建設業界でもロボットやIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)といった高度なデジタル技術による業務改善が進められているが、建築現場では現在も個人のスキルやアナログのコミュニケーションに大きく依存している。デジタル技術の活用効果も現場では限定的で、デジタル化による業務改善は他の産業より遅れている」と、建築現場での課題を指摘する。

 そこで両社は、建築現場の最前線で働く人に注目し、働き方の新たなスタンダードモデルの構築に取り組む。篠井氏は「建築現場で働く人の活動やコミュニケーションを、最先端のデジタル技術でサポートし、デジタル技術を生かしたワークスタイルの変革を進める。また、その過程で蓄積される多くのデータを生産プロセスの最適化に生かし、生産性の持続的向上を目指す」としている。

2社の取り組みについて
2社の取り組みについて

 NTTドコモ 常務執行役員 法人ビジネス本部長の坪内恒治氏は、今回両社で連携する背景について「建築業界では、労働力不足への対応や職場環境への改善が求められている。こうした業界全体の課題に対応するには、オープンでスタンダードなソリューションが必要だ。その目指す方向が竹中工務店と一致し、共同検討を実施することとなった」と語る。両社の取り組みにより「デジタルを活用した働き方のスタンダードモデルとなるソリューションを早期に実現し、生産性向上や働き方改革につながる取り組みを推進していく」(坪内氏)という。

 具体的な取り組みとしては、まず「対面で行われていたコミュニケーションをデジタル技術で支援する」と、竹中工務店 技術本部 副本部長の菅田昌宏氏。そのために、時間と場所に制約されないフレキシブル(柔軟)な働き方を推進するほか、安全に対する意識と知識を高め合う働き方を進める。また、リアルタイムな工程間の連携により、無駄のない働き方を実現するという。

「協働」を支援する取り組みの概要
「協働」を支援する取り組みの概要

 フレキシブルな働き方を推進するに当たり、NTTドコモ 5G・IoT ビジネス部 担当部長の仲田正一氏は「デジタル朝礼」を提案。「従来の対面型の朝礼では情報伝達が不十分。デジタル朝礼では移動待機時間が効率化できる上、時間と場所を分散しながら本質である安全に関する周知を徹底できる」と説明する。

 安全への意識と知識を高め合う働き方に向けては、「デジタル危険予知」を提唱する。「過去の事故事例や予防策をデジタル化して蓄積することで、作業員の安全意識や知識を向上させ、教育効果の高い危険予知が実施できる」(仲田氏)としている。

 無駄のない働き方を実現するには「工程進捗の共有」を提案している。「スマートフォンを活用して工程計画や進行、資材搬送情報などを異なる職種間でリアルタイムに共有し、工程間の連携を強化し無駄の少ない働き方を目指す」(仲田氏)という。

 こうした協働作業を支援する取り組みのほか、個人の活動も支援し、「デジタルアシスタントに支えられたプロフェッショナルな働き方を実現する」と菅田氏は語る。

「個人」を支援する取り組みの概要
「個人」を支援する取り組みの概要

 デジタルアシスタントにより「時間や場所を問わず必要な情報にアクセスできるほか、工事のタスク管理を支援し、待ち時間や遅延のない生産工程が実現できる」と仲田氏。また、個人のバイタルデータ(生体情報)などを蓄積し、健康状態や作業効率を本人にフィードバックすることで、個人のパフォーマンスを持続的に維持し、向上させることを目指すという。

 フレキシブルな働き方や安全意識を高める働き方、プロセス最適化に向けた取り組みは、2020年第2四半期から検討と検証を開始する。検証が終了した項目から順に「早ければ2020年度中のビジネス化も検討する」と、NTTドコモの坪内氏は語る。

 坪内氏は、今回の連携における同社の役割について「ITシステムやネットワークインフラ、AI、IoTなどの資産を活用し、現状分析からあるべき姿を実現するソリューションを提供するのがNTTドコモの大きな役目。また、建築現場での効果測定や価値検証に向けたデータの取りまとめ、さらには実証実験で効果が出た取り組みについて、運用ルールの策定などを担う」としている。

 竹中工務店の篠井氏も「竹中工務店の持つ建築現場のノウハウと、NTTドコモが持つデジタル変革の知見を連携させる」としているほか、「今後は優れたソリューションを持つスタートアップとの連携や、建築業界全体への働きかけも進め、建設業界全体の生産性と安全性を高め、業界の価値向上と魅力向上に貢献していきたい」と述べた。

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