日本ヒューレット・パッカード(HPE)は12月15日、記者会見を開き、代表取締役 社長執行役員の望月弘一氏が、2021会計年度(2020年11月~2021年10月)の事業方針について説明した。同氏は、「デジタル変革(DX)プラットフォームを提供し、顧客ビジネスの変革の加速に貢献したい」と述べた。
望月氏は、前任のJustin Hotard氏(現代表取締役 会長執行役員)の後任として9月1日付で就任。以前はレッドハット 代表取締役社長、NTTデータ傘下のディメンションデータジャパン 代表取締役社長を歴任し、それ以前は日本IBMで20年以上に渡って営業、戦略、サービス事業などの要職を経験した。
事業方針を説明した望月氏。CEOのAntonio Neri氏が掲げる「アズ・ア・サービス」ビジネスへの移行を日本でも進めていく
会見の冒頭で望月氏は、米国時間12月1日に発表したグローバルでの2020会計年度の業績を報告、コロナ禍で第1~2四半期業績は低迷したものの、直近の第4四半期は前年同期並みに回復し、サーバーなど中核事業の復活、新規事業領域の取捨選択、そして、以前から取り組むGreenLakeなどアズ・ア・サービスのビジネスモデルへの移行は順調に進んでいるとした。
市場環境については、コロナ禍に伴う企業の業績悪化が懸念される中でもITの重要性が再認識され、DXをはじめとする取り組みを中心に今後3年間での回復を見込む。DXではデータの活用が中心となり、同社はデータが生成される場所(エッジ)から処理を行うクラウド(データセンター)を一気通貫で束ね、データ分析を通じた洞察を獲得するまでのプラットフォームを展開し、そこにまつわるテクノロジーや製品をアズ・ア・サービスとして提供していくという戦略を掲げる。
望月氏は、事業方針で「5G(第5世代移動体通信)/IoT」「デジタルワークプレース」「データ管理/AI(人工知能)」「ハイブリッドクラウド」の4つを重点領域に定め、戦略に基づく取り組みを推進していくと説明した。
HPE日本法人の2021会計年度事業方針の全体像
5G/IoTでは、5Gやエッジコンピューティング向け製品「HPE Edgeline」を投入し、欧米市場で通信事業者のネットワーク、日本はローカル5G(私設型5G)で需要が拡大しているという。8月には米国で「HPE 5G Lab」を開設し、キヤノンなどの国内パートナーとも5Gのソリューション開発を行っているとした。
デジタルワークプレースでは、テレワーク拡大に伴ってArubaの無線LANソリューションが好調なほか、ユーザーID管理やアクセス制御などのセキュリティ対策、IT資産管理などの整備需要も高まり、9月に買収が完了したSilver PeakのSD-WANソリューションの展開にも注力する。データ管理/AIでは、これまでに買収したBluedataやMapRなどによるデータ管理と、Crayなどのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)によるデータ活用プラットフォームを提供していくとした。
ハイブリッドクラウドでは、オンプレミス/マルチクラウドのITインフラ環境の普及をパートナーとの連携で推進する取り組みを継続。GreenLakeのほか、AI型インフラ管理サービスのInfoSightや、アドバイザリーサービスのRight Mixなどを組み合わせたサービスビジネスを強化する。
変更された営業体制の状況
組織面では営業体制を強化し、産業別の直接販売部門を3チームから5チームに増やし、人数も40%増員した。また、顧客担当と業務推進チームによる役割分担で効率化も図ったとする。パートナー体制では約3000社との連携を強化し、特にエッジやデータ活用など新規領域での取り組みを拡充する。IT構築運用サービスのPointnext(国内約1500人体制)を含め、これら一連の施策を全てアズ・ア・サービスのビジネスモデルで展開していくとした。
会見には、1995年からパートナー関係にある日商エレクトロニクスの寺西清一 代表取締役社長CEO(最高経営責任者)も登壇し、GreenLakeのビジネスについて「柔軟なITの利用に応えるサービスとして期待しており、これまでに製造業など5社から利用契約を獲得した」などと語った。
ゲストで登壇した日商エレクトロニクスの寺西社長は、「創業51年目の当社の歴史でHPEとの関係はその半分以上を占める」とその深さを語った