この1年間は多くの点で記憶に残る年になるだろう。これを1番目に挙げる人は少ないだろうが、2020年に起きた大きな変化の1つに、ようやく拡張現実(AR)が企業や消費者向け製品として本格的に使われ始めたということがある。
2020年に何が起きたのか
2020年5月、新型コロナウイルスの流行が本格化し、世界が長く先の見えない旅路に出た頃、筆者はコンサルティング企業Booz Allenのデジタルトランスフォーメーション担当シニアバイスプレジデントであるMunjeet Singh氏にインタビューし、新型コロナウイルスがARなどの没入型技術に与えている影響について話を聞いた。
Singh氏は没入型技術について話す中で、企業は、コロナ禍が始まる以前も、会議、プレゼンテーションや、バーチャルカンファレンスなどのビジネス利用に関して、ARやその他の複合現実技術の応用について模索していたが、多くの従業員がリモートで働くようになったことで導入や検討が飛躍的に進んだと語った。同氏によれば、これらの技術は、多くの企業にとって「現実的で必要な」ツールになりつつあるという。
同氏は「近年では、バーチャルトレーニングがXRの重要なユースケースになっている」と述べ、「医療、石油・ガス、鉱業、防衛などの業界は、いずれも、トレーニングのニーズを解決するためにこの技術に目を向けている」と説明した。さらに同氏は、「トレーニングに加えて、デジタルツインについて検討する顧客の数が急激に増えている。デジタルツインはプランニングに使用する物理的な環境やデバイスのデジタル的な複製で、新型コロナウイルス関係でも、他のニーズでも利用される。デジタルツインを作れば、何かを永久に変えてしまう前に、物理的な動きや変更点を可視化して計画を立てることができる」と付け加えた。
この1年を振り返ってみれば、2020年が新たな地平線を切り開く重要な年だったことは明らかだ。筆者はプラットフォーム非依存のビジネス・商用ARソリューションを専門とする企業Seekの最高経営責任者(CEO)であり、同社の共同創業者であるJon Cheney氏に連絡を取った。同氏は、2020年はAR広告がブームになった年であり、ARが強力なチャネルとしての位置づけを固めた年になったと指摘している。