ガートナー ジャパンは、未来のアプリケーションに関する2021年の展望を発表した。これによると、「2025年までにアプリケーションの刷新を済ませている大企業は、2021年現在で刷新が必要と感じている大企業の半数に満たない」という。
同社が2020年5月に行った調査において、主要な業務アプリケーションの刷新や近代化の必要性を感じていると回答した国内の大企業(従業員数規模1000人以上)は8割を超え、実際にそのための計画があると回答した大企業も7割近く存在した。しかし、将来のあるべき姿を描くアプリケーション戦略を有している大企業は半数弱にとどまり、戦略立案の担当者を置く大企業も半数に届かなかった。
ガートナーでは、こうした状況でレガシー化したアプリケーションの課題を解決するには、コンサルティング、アプリケーションサービス、パッケージの導入や、ローコード開発、テスト自動化に向けた生産性ツールへのニーズが高まると予想している。さらにレガシーアプリケーションの刷新を完了した企業ではアジャイルやDevOpsなど新しい手法の採用が進むとしている。
また「2024年までレガシー近代化に取り組む大企業の大多数が、現状のアプリケーションではビジネス変化に対応できないと認識するものの、リファクタリングやアーキテクチャーなどの内部構造の変革に成功する企業はその3割未満にとどまる」という。
アプリケーション近代化の今後の方向性を検討する企業の大多数が単なるプラットフォーム移行ではビジネス変化に対応できないと認識しており、過半数はマイクロサービスやAPIによる既存アプリケーションの分割など、リアーキテクチャーのアプローチに関心を持っているという。
ガートナーではアプリケーションに俊敏性を持たせるには、コンポーザブルなスタイルへと変えることが重要となるとし、アプリケーションの内部構造の変革がビジネスの俊敏性向上や成長に貢献することは一部の先進企業の事例から明らかになっているとし指摘する。
そこで変革を実現するための新しいアーキテクチャーや各種テクノロジーのスキルセットへの需要が増大していくとガートナーでは予想している。一方、こうしたスキルセットを持つ人材は、市場にあまり存在していないと同時に育成が困難なため、短期間では解決しないともしている。そのため、2024年になって初めてそうしたスキルセットを求めても、希望通りに取り組みを遂行できないという事態に見舞われる可能性があるという。
さらに「2024年にかけてCX(顧客体験)プロジェクトを開始あるいは強化しない企業の80%は競争力を失い、市場シェアを減少させる」という。
多くのエンタプライズアプリケーションは企業視点で導入・構築されてきたものであり、顧客視点での導入は新たな取り組みとなる。また、各顧客接点で利用されるアプリケーションは顧客に対応する各部門が独自に計画・導入することも多く、顧客へ提供する価値の一貫性が損なわれる恐れがある。このようなことから、組織横断的にプロジェクトを組んでCXの実現を目指すことが必要になる。
しかしガートナーでは、顧客中心型のアプローチを採用しない企業がこうした課題を克服して目標とするCXを実現する可能性は非常に低く、そのような企業は市場での競争力を低下させるだろうと予測している。
最後に「2025年までにオフィスワーカーの半数以上が意思決定のアドバイスやサポートを得る手段としてアプリケーションに組み込まれた人工知能 (AI) を用いるようになる」と予測された。
ガートナーでは、急速な進化を続けるAI技術の中でも、業務への情報活用の観点から注目すべきは自然言語処理(NLP)や自然言語生成(NLG)だとした。人間がAIに合わせなくてはならない部分も多く残されているものの、今後これらの技術の活用機会は急速に広がっていくとガートナーはみている。そしてその先には、AIアシスタントと自然言語で対話するだけで情報を入手したり業務を遂行したりする新しい働き方が待っているとした。