富士通研究所は、製造現場の業務変革に向け、ローカル5G(特定エリア用第5世代移動体通信システム)を活用して、広大な工場全体に設置される多数のカメラで取得した大量の映像データを高速に解析可能なシステムの自動設計技術を開発した。
エッジとデータセンターの連携によるシステムコストの削減効果(出典:富士通研究所)
今回開発した技術では、GPU(Graphics Processing Unit)サーバーで行っていた処理を工程別に分割してコンテナー化し、安価なエッジサーバーとデータセンターに集約したGPUサーバーとで効率的に連携させて実行する。さらに、コンテナーごとに必要な映像解析処理量に応じたCPU(Central Processing Unit)のクロック周波数やGPU能力などのリソース要件を設定できるようにすることで、高速性を保ちながらエッジサーバーとデータセンターに自動的に配備されるように設計できる。
これにより、各現場のエッジサーバーにおける映像処理の負荷変動をデータセンター側で吸収し、ピーク時を想定したサーバー台数を整備することなく、最大3分の1までシステム全体のコストを削減できる。
従来、人工知能(AI)を使った映像解析は、高価なGPUサーバーをピーク時の処理負荷を満たす規模で各現場に設置する必要があった。そのため、工場全体に設置した多数のカメラ映像を解析するには、莫大な機器コストがかかる問題があった。また、映像解析の処理負荷がシステムの運用開始後に大きく変動した場合に、システム構成を容易に変更できないなど運用面においても問題があり、大規模な映像解析の実施が困難となっていた。
リソース要件については、必要なCPUのコア数やメモリー量だけでなく、CPUのクロック周波数やGPUの性能など、従来の自動コンテナー配備技術では対応できない、映像処理特有の要件までパラメーターとして扱える。
その上で、エッジとデータセンター間の通信量が最も少なく、かつ各処理のリソース要件を満たすように、各コンテナーの配備先をエッジとデータセンターにあるさまざまなスペックのサーバーの中から自動で判断する。
さらに、複数のコンテナーを1つのGPUで同時に実行可能にし、各コンテナーでの処理におけるリアルタイム性の要求度合いに応じてスケジューリングできるようにした。
エッジとデータセンターを連携させたシステムの性能を最適化する設計技術(出典:富士通研究所)
組立工場を想定した実験環境において、16台分のFull-HDカメラで撮影した作業員の行動の映像から、組付け作業ミスと運搬物の滞留をAIで検出する映像解析システムを構築したところ、16台のエッジサーバーとデータセンターを連携させたシステムを本技術で設計することで、数秒で作業ミスなどをフィードバックできるとともに、サーバーを含むシステム全体のコストを最大3分の1まで削減できることを確認した。