SAPジャパンは4月13日、「Industry 4.Now推進サービス」の提供を開始した。顧客企業とともにインダストリー4.0化戦略の具体化を進めるためのサービスで、2020年9月に開設された「Industry 4.Now HUB TOKYO」での取り組みを発展させるためのサービスと位置付けられる。
(左から)SAPジャパン 常務執行役員 クラウド事業統括の宮田伸一氏、SAP Labs Japan Head of Digital Supply Chain Managementの鈴木章二氏、サービス事業本部 ソリューションデリバリー本部 本部長の坂田健司氏
まず概要を説明した同社 常務執行役員 クラウド事業統括の宮田伸一氏は、Industry 4.Now HUB設立の目的について「日本における製造業のDX(デジタル変革)を本質的に加速させること」だとした。その上で、同社の考えるDXの定義を「企業活動全体、エンドツーエンド、顧客視点で再設計・最適化すること。決して『部門単位で何かのツールを導入する』ことではない」と指摘した。
日本の製造業のDXを本質的に加速させるための同社の取り組み
国内製造業のDXに対する取り組みの現状として「小さく始めてそのまま小さく終わる」または「あまりに大きすぎてどこから手をつけたら良いのか分からない」「構築/稼働まで行くともう手をつけないという発想から、その後の要件の変更やアップデートが困難になる」といった課題を挙げる。
さらに宮田氏は、欧米でのやり方の良い点/学ぶべき点を採り入れた上で日本のDX推進を支援していきたいとし、Industry 4.Now推進サービスについて「ユーザー企業に寄り添って伴走していくサービスメニュー」だと位置付けた。
続いて、同社 SAP Labs Japan Head of Digital Supply Chain Managementの鈴木章二氏が、Industry 4.Now HUB TOKYO設立後のこれまでの活動実績についての説明した。
同氏は「設立発表の際に『餅を絵に描くだけではなく、本当にそれが技術的要素として実現できるのか、ここを具体的なショーケースをもとに顧客企業と一緒になって考えるようなワークショップを提供していく』としたが、2020年10月から活動を本格化して半年後の2021年3月末時点でワークショップのエンゲージメントは25社で、立ち上がりがよい」と振り返った。
Industry 4.Now HUB TOKYO開設から半年の成果
一方、こうした取り組みの次に重要になるポイントとして、「ワークショップで得たイメージをいかにして実装のステップに落とし込んでいくか」だと指摘。「さもなくば、計画は作ったが実行が伴わないという結果に終わる」との認識から新サービスの提供につながったとした。
最後に、同社 サービス事業本部 ソリューションデリバリー本部 本部長の坂田健司氏がIndustry 4.Now推進サービスの内容を紹介した。
Industry 4.Now推進サービスの概要
同氏は、Industry 4.Now HUB TOKYOの開設によって、Industry 4.0について抽象的には分かるが具体的なイメージが持てない企業に対して、事例紹介やワークショップを通じて「Industry 4.0の具体的/最終的なイメージを持つことができた」「SAPのIndustry 4.Nowソリューションについても理解が深まった」といった成果が得られたと語る。
その上で、次の課題として「Industry 4.0を自社で実装していく/工場内にとどまらず、事業経営全体にまたがるようなソリューションを実装していくとなると、『何をどういう順番でやっていけばよいのか』をキチンと決めていく必要がある」と指摘し、Industry 4.Now推進サービスで「『何をどこから手をつけていけば良いのか』をロードマップに描くための支援をする」とした。
サービスの全体プロセスは、「改善機会の評価」「実現シナリオ(仮説)の定義」「プロトタイプ実機検証」「段階的導入/継続的改善」の大きく4ステップで構成される。この過程で関係各所の意識のすり合わせ/共通理解の醸成や、PoC(概念実証)を実施すべきポイントの見極めなども行われることから、日本企業が陥りがちな何から何までPoCを実施しようとすることで引き起こされる「終わらないPoC」、必要なPoCを行わなかったことによる「大きく始めて大きく失敗する」といった問題も回避できるという。
Industry 4.Now推進サービスの全体プロセス
Industry 4.Now推進サービスの各プロセスの詳細内容
同氏は「Industry 4.Now推進サービスは、『小さく始めて小さく終わる』のではなく、『小さく始めて大きく育てていく』ことができるような構成となっている」とまとめた。