筆者がコンピューターを使い始めた頃、そのコンピューターはIBMのメインフレームであり、筆者は「3270」と呼ばれる端末で作業をしていた。当時の私は運がよかった。その端末が使えなければ、私はIBMのホレリス式80欄パンチカードで作業をするしかなかったからだ。その後、70年代の後半から80年代前半に「CP/M」やApple、「IBM PC」が登場し、すべては変わった。コンピューティングパワーは、遠くに置かれたDECの「PDP-11」や「VAX」などのミニコンピューターや、IBMのメインフレームから、デスクの上に置かれたPCに移った。 それから40年経って、ITの世界の作業モデルは再び変化している。今回の変化は、PCが「Windows 365」や「Chrome OS」などのクラウドベースのDaaS(Desktop as a Service)に置き換わりつつあるというものだ。
このアイデアが気に入らない人もいるだろうが、その人たちにはご愁傷様と言うしかない。MicrosoftとGoogleは、それぞれ別のタイプのDaaSを推進しており、将来のデスクトップはデスクの上ではなく、主にクラウド上で動くものになる可能性が高い。
とはいえ、この種のアイデアがこれまで完全に姿を消したことはなかった。Sun MicrosystemsとOracleの「Sun Ray」のように、さまざまな企業がリモートデスクトップ製品を存続させようと試みてきたほか、LantronixやAten、Raritanなどの企業は、今でも手元から複数のリモートマシンを利用するためのKVM over IPを製造している。また、中央サーバーのリソースを利用して動作するシンクライアントコンピューティングなどの、別のアプローチも利用されている。例えば、Dell Technologiesは「Wyseシンクライアント」のハードウェア製品を販売している。それどころか、がんばって探せば、今でも「ADM-3A」や「Televideo 922」、私のお気に入りだったDECの「VT-102」などのダム端末を購入できるだろう。
なぜ、こうしたリモート端末は姿を消さなかったのだろうか。それは、多くのユーザーがPCを愛しているように、多くのマネージャーが今も集中管理というアイデアを愛しているからだ。従業員にいつマルウェアに感染するかもしれない1000ドルのデスクトップPCを渡して、こっそり「フォートナイト」をプレイしているのではないかと疑うよりも、確実かつ安全にスプレッドシートで作業をさせたいのだ。正直なところ、管理者側の心配にも一理あると言わざるを得ない。
だからこそ、ダム端末から始まって現在のWindows 365に至るまで、DaaSの概念は生き続けている。ここからは、この概念の過去と現在、未来のあり方について詳しく見ていこう。