ビジネスとテクノロジーのコンポーザビリティー

デジタルエクスペリエンスの向上に求められるコンポーザビリティー

原水真一 (サイトコア)

2021-10-25 06:00

 前回は、ビジネスにおけるコンポーザビリティー(構成可能性)の意味と現状について考察をまとめた。コンポーザブルなビジネスとは、「外部環境の急速な変化に応じて迅速かつ柔軟に対応できる組織」だと定義し、このような組織の実現には、コンポーザブルなシステム、そしてデータが必要だということを解説した。

 今回は、コンテンツ管理システム(CMS)を軸に、企業のオンライン活動を支えてきたSitecoreの視点で、コンポーザビリティーを実現するためのテクノロジーとその用法、事例を紹介していく。

デジタルエクスペリエンスとコンポーザビリティー

 コンポーザブルビジネスを実現するには、企業活動の根幹であるシステムが柔軟でなければならない。しかし、2000年代やそれ以前に構築されたシステムのほとんどは、堅牢性を重視し過ぎるあまり、機能追加などの必要に迫られたとしても、短期間ではどうすることもできない作りになっていることが多い。そして、この傾向は大企業ほど強くなり、新興企業であるほど弱まっていく。つまり、大企業はマーケットの変化への対応に時間がかかってしまうが、新興企業は機敏に対応できるということだ。この対応の早さの違いが生み出した差は歴然で、かつてないほどの勢いで新興企業が躍進し、あらゆる業界で企業間の世代交代が進んだ。

 もちろん、全ての大企業が手をこまねいていたわけではなく、ITインフラにおいてコンポーザブルに構築を進めることで、既存の事業基盤をさらに強固にするだけでなく、新たな事業基盤を手に入れた企業もある。ただ、今では多くの企業がITインフラにコンポーザブルアーキテクチャーを採用し、システム自体の柔軟性を考慮しているため、ITインフラの違いだけで大きなアドバンテージを手にすることは難しくなっている。

 その中で注目され始めているのがデジタルエクスペリエンス(デジタル体験)の向上だ。このことは、ユーザーと企業がつながる際のオンラインコミュニケーション全般でのユーザーの満足度を高め、ユーザーが企業にもたらす価値を増幅させることにつながる。デジタルエクスペリエンスの向上には、主に3つのポイントがある。


 1つ目は、コンテンツやそれに付随するアセットを自由に利用、変更できる状態を作り上げることだ。これには、デジタルアセット管理(DAM)やCMSのようなツールの導入が必要となる。これらのツールは、ユーザーに届ける情報アセットを集約的に管理する上で欠かせないため、コンテンツのコンポーザビリティーを考える際の起点となる。

 2つ目は、情報を適切なタイミングで、必要としている人に届けられる状態にすることだ。これには、ユーザー情報の蓄積と情報に基づくコンテンツのパーソナライゼーション、そして適切なタイミングでの情報配信という機能を保持している必要がある。この一連の機能をマニュアルで実行するのは現実的ではないため、さまざまなサービスやシステムを組み合わせて自動化することが必要になる。現在は、カスタマーデータプラットホーム(CDP)などにデータを蓄積し、蓄積されたデータを分析して、個々のユーザーに合わせたコンテンツ配信を設計し、マーケティングオートメーション(MA)ツールなどを用いてウェブやメールなど個々のユーザーに適したチャネルを利用して情報を届けるという流れが広く普及している。

 最後のポイントは、適切な導線でユーザーを購買活動へと導くことだ。この導線設計は、対消費者ビジネスだけでなく、対法人ビジネスにおいても重要度が高く、企業の最終的な売り上げに大きな影響をもたらすため、営利運営であれば定期的な見直しが必須だ。

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