ITベンダーに依存するユーザー企業の理由--「丸投げ」「責任転嫁」が上位に

國谷武史 (編集部)

2021-11-25 13:51

 ドリーム・アーツは11月25日、オンライン記者説明会を開いて、ITユーザー企業を対象にITベンダーとの関係性にまつわる調査を実施した結果を発表した。ITベンダーへの依存度が高いユーザー企業では、ベンダーに業務を丸投げしたり責任転嫁したりできることがメリットの上位に挙げられた。

 この調査は10月28日~10月29日に、従業員1000人以上の企業で働くITの意思決定関与者1000人にウェブでアンケートしたもの。説明を行った社長室 コーポレートマーケティンググループ ゼネラルマネージャーの金井優子氏は、「調査目的はITベンダー批判ではなく、ベンダーとユーザーの健全な関係構築のヒントを得るため」と述べた。

 まず調査結果の全体概要は以下とした。

  • 自社はベンダーに依存していると思う:61%
  • ベンダー依存にプラスの側面がある:57%
  • 主要ベンダーを変更したことがない:80%
  • システム開発を内製化している:57%
  • 事業現場主導などデジタル化を容認する:64%

 また、ベンダーへの依存状況に応じてユーザー企業を以下の6種類に分類した。

  • オールドタイプIT群:IT予算の大半が既存システムの保守に割かれ、オンプレミス中心で運用している
  • ニュータイプIT群:新規システムへのIT投資が多く、クラウド主体で運用している
  • 内製群:システム開発の内製化率向上に取り組んでいる
  • デジタルの民主化群:業務現場主導でデジタル化に取り組んでいる
  • ズブズブ群:長期に渡り同一ベンダーと関係を構築し、業務を丸投げしている
  • 準ズブズブ群:ズブズブ群ほどではないが、業務の丸投げ体質が強い
ベンダーに依存するユーザー企業の分類状況(ドリーム・アーツ説明資料より)、※ドリーム・アーツ社のデータ変更により画像を変更しました。2022年1月27日
ベンダーに依存するユーザー企業の分類状況(ドリーム・アーツ説明資料より)、※ドリーム・アーツ社のデータ変更により画像を変更しました。2022年1月27日

 まずユーザー企業がベンダーに頼るメリットでは、「専門分野を超えたアドバイスが受けられる」(約56%)が最も高く、「自社でのIT人材の獲得・育成が不要」(約40%)、「経営に関してもタッグを組める」(約30%)、「予算を立てやすい」(約27%)の順だった。

ベンダーに依存するメリット(ドリーム・アーツ説明資料より)
ベンダーに依存するメリット(ドリーム・アーツ説明資料より)

 ベンダーとの付き合いで得したことには、「視野が広がる」(76%)、「困った時に頼れる」(73%)、「トラブルを無事解決できた」(69%)、「業務を丸投げでき仕事が楽になる」(65%)などが挙がった。特に「業務を丸投げでき仕事が楽になる」の割合は、ズブズブ群と準ズブズブ群で80%以上に達している。

ベンダーとの付き合いで得したこと(ドリーム・アーツ説明資料より)
ベンダーとの付き合いで得したこと(ドリーム・アーツ説明資料より)

 ズブズブ群と準ズブズブ群の回答比率が高いものには、「トラブルの責任をかぶってくれる」「ベンダーが転職などをオファーしてくれる」「会食でおごってくれる」「土産などをくれる」が目立つ。一方で、ニュータイプIT群と内製群の回答比率が高い理由には、「視野が広がる」「トラブルを解決できる」が挙がっている。

 ITベンダーの選考基準では、ズブズブ群と準ズブズブ群において「世界的に有名な企業と契約すれば安心」「国内大手ベンダーと契約すれば安心」「小規模ベンダーとの直接契約は面倒」の回答割合が高かった。逆にニュータイプIT群と内製群では低い。

 ニュータイプIT群と内製群の回答割合が高いものには、「小規模ベンダーでも優秀な人材や魅力的なソリューションがあれば直接契約すべき」「ビジネスモデル変革なども含む提案ができるベンダーと契約したい」「最新技術に知見にあるベンダーと契約したい」が挙げられた。

ベンダー選定基準(ドリーム・アーツ説明資料より)
ベンダー選定基準(ドリーム・アーツ説明資料より)

 ユーザー企業が頼りたい理想的なベンダー像では、約33%が「自律を促してくれること(内製化支援や教育)」を挙げていた。これに「魅力的な提案をしてくれる」(約23%)、「責任感が強く頼りになる」(約14%)が続く。

 新しいベンダーと取引を開始した理由には、「新しいサービスへの切り替え」が約46%で最も多く、「自社変革のパートナーになりそうだから」(約41%)、「新規利用するサービスの知見が既存ベンダーになかった/不足していた」(約39%)、「既存ベンダーより安い」(約36%)などが挙がった。

 こうした結果について取締役執行役員 CTO(最高技術責任者)の石田健亮氏は、「日本企業は古くから電算化に取り組むなどシステム構築には熱心だが、構築後は人材が散逸するなどして運用保守が場当たり的になり、結果的にシステムがつぎはぎになる。経済産業省は、これがデジタルトランスフォーメーション(DX)の阻害要因と指摘しているが、ユーザーとベンダーの関係性がDX推進の切り口になると考える。調査結果は日本企業の『デジタル敗戦』を映し出したが、これを契機にIT産業の構造改革につながってほしい」と述べた。

ドリーム・アーツ 取締役執行役員 CTOの石田健亮氏
ドリーム・アーツ 取締役執行役員 CTOの石田健亮氏

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