内部者による脅威は、企業に年間1540万ドル(約17億円)の損害を与えており、今や内部者の過失がセキュリティインシデントの大きな原因の1つになっていることが調査で明らかになった。
今日の企業は、あらゆる角度からサイバーセキュリティの危険に晒されている。脆弱なエンドポイントセキュリティ、安全性の低いクラウドシステム、(パッチ未適用、あるいはゼロデイの)脆弱性、企業ネットワークやリモートワークシステムへの無秩序なIoTデバイスの導入などは、どれもサイバー攻撃につながる可能性がある問題だ。
また、脅威の検出と危機対応を管理する上では、関係者のトレーニングやセキュリティ意識の欠如、ミス、あるいは悪意のある意図的な行動などといった、人間が関わる要素についても考慮に入れる必要がある。
Proofpointが発表したレポート「2022 Cost of Insider Threats Global Report」(内部脅威による損失グローバルレポート2022)では、企業が内部者による脅威によって年間1540万ドルの被害を受けていることが明らかになった。この数字は、2020年の推計値と比べて34%増加している。
Ponemon Instituteが実施したこの調査は、世界のITプロフェッショナルやITセキュリティ担当者1000人以上から得た回答を元にしたものだ。回答者の所属する組織は、内部者による重大なサイバーセキュリティインシデントを1回以上経験している。
調査の結果、内部者による脅威はこの2年間で「劇的に」増加しており、内部者が関係するインシデントの56%が従業員や委託業者の過失によるものであることが分かった。一方、インシデントの26%は内部者による犯罪行為によるものであり、18%は従業員の認証情報の盗難が原因で起こっていた。認証情報が盗まれた原因には、私用デバイスのセキュリティの甘さや、弱いパスワードの利用などが考えられるだろう。
被害額については、スタッフや請負契約職員の過失によるインシデントへの対応に要したコストが約660万ドル(約7億6000万円)、内部者による破壊行為、データの盗難、意図的なマルウェアの導入などの犯罪行為によるコストが約410万ドル(約4億7000万円)、認証情報の盗難が原因の攻撃によるコストが約460万ドル(約5億3000万円)だった。
サイバーセキュリティインシデントが発見された際に、企業が内部者によるインシデントを封じ込めるまでに要した時間は平均85日で、前回調査時の77日から増加した。30日以内に解決されたインシデントは、全体の12%にすぎなかった。
内部者が関与するサイバーセキュリティインシデントを解決するために要した平均費用は18万4548ドル(約2100万円)だったが、この額は、被害企業の規模によってははるかに大きくなる場合があるという。米国の企業は、内部者が関与するインシデントの解決に年間1753万ドル(約20億円)を費やしているのに対して、欧州の企業が費やしていた費用は1544万ドル(約18億円)だった。
Proofpointのサイバーセキュリティ戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントRyan Kalember氏は、「リモートワークやハイブリッドワークが何カ月にもわたって続いた結果、『大量離職(Great Resignation)』が起こったことで、内部者による脅威インシデントが発生するリスクが上昇した。これは、離職者の多くが、企業を離れる際にデータを持ち去るためだ」と述べている。「さらに、サイバー犯罪者にとって、企業の内部者(これには従業員、請負契約職員、サードパーティーベンダーの職員が含まれる)は、重要なシステムや、データや、インフラに幅広くアクセスするための魅力的な攻撃対象でもある」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。