アクセンチュアは2月1日、ヘルスケアに対する意識・行動についての調査結果を発表した。それによると、日本では世界平均と比べて、ITを活用したヘルスケアソリューション(デジタルヘルス)の普及が遅れているといい、同社はデジタルを用いた受診相談や診療支援で受診を効率化したり、慢性疾患を持つ患者データを収集して医師と共有したりすることが必要だとしている。
同調査は2021年6月16~23日、日本を含む14カ国の人々を対象に、インターネットによるアンケート形式で実施された。全体では1万1823人、日本では833人から有効回答を得た。
新型コロナウイルス感染症の流行前後での医療アクセスの変化について「良くなった」と回答したのは、世界平均で18%だったのに対し、日本では6%だった。コロナ禍で改善した理由として、オンライン診療などのデジタルヘルスが普及したことが考えられるという。
過去1年以内で健康管理にデジタルヘルスを利用した人の割合は、世界平均では60%だったが、日本では37%だった。特にオンライン診療、電子健康記録、ウェアラブルデバイスなどは、世界平均の利用率を大きく下回っていた(図1)。
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日本では、ミレニアル世代(同調査では1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代と定義)を境にしてデジタルヘルスの利用経験に差があり、ミレニアル世代より下の世代は40%台なのに対し、それより上の世代は20%台だった。また、日本でデジタルヘルスの利用経験がある人に疾患の領域を聞いたところ、上位2領域は循環器系(14%)とメンタルヘルス系(13%)で、これらの疾患はデジタルヘルスと比較的親和性が高いといえる。
日本の回答者がデジタルヘルスを利用する上で重視する要素については、「データの安全性」「プライバシーに対する信頼性」「医療機関からのアドバイス」が世代を問わず挙がっていた。加えて、ミレニアル世代以下は「デバイスの質や価格」、ミレニアル世代より上の世代は「健康に関するより良い情報の入手」を重視していた。
アクセンチュアは日本におけるデジタルヘルス利用の障壁として、「データセキュリティへの信頼」と「医療への人工知能(AI)活用に対する不安」があるとしている。
日本では、第三者が個人のヘルスケアデータを安全に管理することへの信頼度が世界平均に比べて低い。世界平均と日本の両方で信頼している人の割合が最も高い「病院」においても、世界平均では41%、日本では23%だった。また、「AIによる診断支援に不安がある」と回答した割合は、世界平均では33%、日本では46%、「AIによるカルテ記載の補助に不安がある」と答えた割合は、世界平均では25%、日本では35%だった。
説明会に登壇したビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクターの藤井篤之氏は、これらの調査結果から「日本でデジタルヘルスを普及させるには、データセキュリティやAI活用に対する安心感を持ってもらうことが必要」と述べた。