ジョブ型導入で「適材適所」から「適所適材」へ--富士通のHR戦略

大場みのり (編集部)

2022-03-29 10:34

 富士通は3月28日、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)の取り組みとして、自社のサステナビリティー経営や人材戦略について説明会を開催した。本記事では、同社の人材戦略に関する施策を紹介する。

 富士通は、「社内外の多才な人材が俊敏に集い、社会の至るところでイノベーションを創出する企業へ」という人材(HR)ビジョンを掲げている。同社は人材戦略において、ジョブ型人材マネジメントの導入やデジタルトランスフォーメーション(DX)人材の育成などを行っている。

従業員の挑戦を後押しする、ジョブ型人材マネジメント

執行役員常務 CHROの平松浩樹氏
執行役員常務 CHROの平松浩樹氏

 ジョブ型人材マネジメントについて、執行役員常務 最高人事責任者(CHRO)の平松浩樹氏は「われわれは、制度の導入自体を目的としているわけではない。HRビジョンの実現に向けて、『全ての従業員が魅力的な仕事に挑戦する』『多様かつ多才な人材がグローバルに協働する』『全ての従業員が常に学び成長し続ける』という状態へ変革する手段として位置付けている」と説明した。

 富士通は人材マネジメントにおいて抜本的な改革を実施し、「事業戦略に基づいた組織デザイン」「チャレンジを後押しするジョブ型報酬制度」「事業部門起点の人材リソースマネジメント」「自律的な学び・成長の支援」に取り組んでいる(図1)。人事制度は、全体的な整合性や一貫性がないと目指している効果が得られないという。

図1:人材マネジメントのフルモデルチェンジ 図1:人材マネジメントのフルモデルチェンジ
※クリックすると拡大画像が見られます

 従来の日本型の人材マネジメントでは、新卒一括採用や長期雇用を前提に「抱えている人材をどう配置するか」という発想で組織を設計する傾向があり、結果として階層が増えて各ポジションの責任や権限が曖昧になっていた。同社が目指すジョブ型の人材マネジメントでは、事業戦略に基づいて組織を設計し、ポジションの役割を明確にした上で、外部からの登用も視野に入れながら最適な人材を配置する。いわば「適材適所」から「適所適材」の人材マネジメントへ変えていく。

 報酬体系は、職能から職責ベースに変更した。グローバル共通で職責「FUJITSU Level」を格付けし、月俸はその格付けごとに定めている。同じ仕事を長年続けても職責が変わらなければ報酬にも変化がないため、従業員がより大きな職責へ挑戦することを促している。限られたポジションの獲得競争も生まれるため、目指すポジションのジョブディスクリプション(職務記述書)を基に自身のスキルや経験を築くことが求められる。

 募集ポジションを公開し、全従業員が自由に応募できる「ポスティング制度」の拡大にも取り組んでいる。これまでは組織が業務都合や従業員の成長を考え、配置転換や昇格を計画・実行してきたが、現在は従業員本人がキャリアプランを考え、ポスティング制度を活用して異動や昇格を目指す形を取っている。新任幹部社員への登用はポスティングで実施し、660の募集ポジションに対して1030人が応募して578人が合格した。ポスティングで異動した従業員のエンゲージメントは向上傾向にあり、特に「やりがい」や「機会の均等」の項目が改善したという。

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