企業のリーダーに向けた無料の量子コンピューティング講座が開設

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2022-09-01 12:59

 量子コンピューティングは依然として、SFの世界の話のように感じられるかもしれない。しかしそうではない。これは、従来型のコンピューターが扱える領域を超えた問題の解決に向けて量子力学を利用するという、急速に成熟しつつあるテクノロジーだ。このテクノロジーによって、既存のあらゆる暗号を解読できるようになるのか、膨大な数の自動運転車を統制できるようになるのか、あるいは天候の精密な予測が可能になるのかについてはまだ分からない。ただ分かっているのは、新世代のコンピューター専門家が必要になるということだけだ。そうした専門家の活用を支援するために、The Linux Foundation世界銀行は「Fundamentals of Quantum Computing」(LFQ101)という新たな無料の学習コースを開設した。

量子コンピューティング

 このコースはプログラマーや管理者を対象にしたものではなく、量子コンピューティングによって世界がどのように変革されていくのかを理解する必要があるリーダーやプランナーに向けたものとなっている。つまり、最高情報責任者(CIO)や最高技術責任者(CTO)、あるいは2020年代や2030年代のコンピューティングの世界の計画や設計、開発を指揮する責任者にふさわしいコースだ。

 Deloitte Touche Tohmatsuの2021年12月の予測によると、2022年に日常業務で量子コンピューターを使用する企業は1ダースに満たないが、未来は考えているよりも早く訪れるという。またIBMは、2025年までに4000量子ビットを超える量子コンピューターを提供する計画だ。

 4000量子ビットの量子コンピューターでは、どういったことが可能になるのだろうか。まず、量子暗号が実用化されるだろう。また、量子計算と従来の古典的計算をシームレスなかたちで連携できるようにもなるはずだ。その結果、2048ビットのRSA暗号が10秒未満で解読でき、仮想通貨(暗号資産)から銀行口座のセキュリティに至るまで、暗号システムに依存しているすべてのものが破綻することになる。

 これは無視できない事態といえる。それ故に、コンピューターの性能が今後、爆発的進歩を遂げた際に、企業や政府のトップで舵を握る人たちが、この問題や関連する諸問題に対処するための準備を整えてもらうのがこのコースの狙いだ。

 世界銀行でOpen Learning Campusの責任者を務めるSheila Jagannathan氏は「この新たなテクノロジーの潜在的な影響力を考えた場合、その発展に伴って、基礎的な知識を身につけた上で、われわれのスキルやシステム、テクノロジー上の統制に及ぶ意味合いを理解しておくことが重要だ」と説明している。まさにその通りだ。

 このコースは、詳細にまで踏み込むものではない。修了までおよそ3時間程度しかかからない。しかし受講し、量子コンピューティングの基礎を学ぶことで、同テクノロジーと、それが今日のテクノロジーにどのような破壊的影響をもたらすのかについて、よりよい理解が得られるようになる。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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