IBMは米国時間5月10日、2年前に発表した量子コンピューティングに関するロードマップが順調に進んでいることを明らかするとともに、2025年までに4000量子ビットを超える量子システムを実現することを目指すという新たな計画を発表した。最高経営責任者(CEO)のArvind Krishna氏は、取材陣に対して、この進歩が達成されれば、2025年には量子コンピューティングが実験段階ではなくなると語った。
Krishna氏は、ボストンで開催中の年次自社カンファレンス「IBM Think」に先立って、一部の単純なユースケースに関しては、さまざまな組織が2023~2025年の間に量子コンピューターを導入できるようになるはずだと述べた。同氏は、例えば電気自動車メーカーは、量子コンピューターを使って水素化リチウムなどの材料を解析してより優れたバッテリーを開発したり、軽量で強度の高い自動車を実現するための解析が可能になると説明した。ほかにも、検索エンジンの最適化など、さまざまな企業が簡単な最適化作業に量子コンピューティングを利用できる可能性がある。
「4000量子ビットに近づき始めると、これらの問題の多くが量子コンピューターの射程に入ってくる」とKrishna氏は言う。
さらに数年後には、もっと複雑な量子コンピューティングの問題も解けるようになると同氏は述べた。例えば、製薬会社は2025~2030年までに恩恵を受けられるようになるという。
同氏は「医薬品については(中略)おそらくもう少し先のことになるだろう」と述べた後、同社が数社のバイオテクノロジー企業と掘り下げた議論を行っていることを明らかにした。
Krishna氏は、「新型コロナウイルスワクチンの例で、コンピューターを医薬に応用すれば、作業をずっと早く進めることができることが明らかになった」と述べている。
IBMは2020年に、1121量子ビットのプロセッサーと、必要なコンポーネントや冷却システムを2023年までに実現すると述べている。その際には、「IBM Quantum Condor」と呼ばれる1121量子ビットのプロセッサーを格納することなどを想定した、幅6フィート(約1.8メートル)、高さ12フィート(約3メートル)の冷却システムを開発中であることも明らかにした。IBMはいずれ、100万量子ビットの量子システムを作ることを念頭に置いているとしていた。同社は、1000量子ビットが達成されれば、量子システムの実用化を阻んでいるさまざまな障害を克服する転換点になると予想している。
IBMは2021年に、127量子ビットのプロセッサーである「Eagle」を発表した。また同社は、2022年中に433量子ビットのプロセッサー「Osprey」をリリースする予定だ。
このほか、IBMは2023年に、クラウドに組み込まれたワークフローや「Qiskit Runtime」でフリクションレスな開発エクスペリエンスを構築するという目標に向けて前進するとしている。サーバーレスのアプローチを中核的な量子ソフトウェアスタックに導入するという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。