量子コンピューティングは膨大な可能性を秘めているものの、依然として非常に実験的な技術開発の分野であると考えられており、その成果の行く末はまだわからない。Googleは、こうしたSFのような量子コンピューターを支える科学が、まだ発展途上であることを認めている。その一方で、同社の量子コンピューティングの取り組みを振り返った最新のレビューでは、量子コンピューティングを漠然とした一連の有望な技術から、人類のために具体的かつ実用的なツールにしたいという同社の考えが示されているようだ。
同社が年末に公開したブログ記事「2021 Year in Review: Google Quantum AI(2021年を振り返る:Google Quantum AI)」では、この技術の将来に焦点を当てている。誤り訂正量子コンピューターを構築するための取り組み、より実用的なハードウェア構築のマイルストーンに向けた動きなど、2021年に遂げた進歩に言及しつつも、今後成し遂げたい目標に触れている。同社は長期的に、「特定のタスクで古典的コンピューター、スーパーコンピューターを凌駕する量子コンピューターを実証する」「信頼性の高い誤り訂正量子ビットのプロトタイプを構築し、ノイズの問題を克服する」「『任意に長い時間』エラーのない論理量子ビットを構築する」といったハードウェアの課題に取り組むとしている。
同社は、このようなことを2030年までに達成したいとしている。目標を実現できれば、量子コンピューティングは技術開発のさまざまな分野で、革命を引き起こすことができるとGoogleは考えているようだ。同社は量子コンピューティングの応用についても模索しており、学術機関や業界パートナーと協業している。カリフォルニア工科大学との共同研究では、特定の条件下で量子マシンは、「従来必要とされているよりも、指数関数的に少ない実験で物理システムについて学べる」ことが示されたという。また、コロンビア大学との共同研究でも、量子技術が科学的シミュレーションの手法に役立つことを示す結果が得られたとしている。同社は量子コンピューターが、量子物理現象をシミュレートするためにいかに利用できるかを今後も研究し続けると述べている。
こうした取り組みを推進するために、Googleは量子コンピューティングエコシステムへの投資を続けるとしている。カリフォルニア州サンタバーバラの「Quantum AI」施設を今後も拡張するほか、同社のオープンソース量子コンピューティングプラットフォーム「Cirq」を改良していく。ほかにも、「量子化学の問題における対称性を利用して、効率的なシミュレーションを行う」新しい「Fermionic Quantum Simulator」のリリースや、市販のGPUを使用して、ノイズの多い量子プロセッサーのシミュレーションを可能にするqsimツールのアップデートなどを計画している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。