まるでSFに出てくる話のように聞こえるかもしれないが、量子ネットワークの構築は世界の多くの国々が目指す戦略的野望となっている。米エネルギー省(DoE)は最近、量子インターネットという夢を実現するための段階的計画を初めて発表し、少なくとも準備段階に相当する成果物が今後10年のうちに構築される可能性があるとした。
米国はこの計画により、欧州連合(EU)や中国といった、量子通信というコンセプトに高い関心を寄せている国々の仲間入りを果たした。しかし、量子インターネットとは具体的にどのようなものなのだろうか?また、どのように動作するのだろうか?さらには、どのような素晴らしいものごとを実現できるのだろうか?
量子インターネットとは何か?
量子インターネットとは、量子力学の不思議な法則が支配する環境内で、量子デバイスによる何らかの情報のやり取りを可能にするネットワークのことだ。理論的に言えば、これによって量子インターネットは、今日のウェブアプリケーションでは実現不可能だった、今まで見たこともなかったような能力を手にするようになる。
量子コンピューティングの世界において、データはキュービット(量子ビット)という情報単位でエンコードされる。なお、こういったキュービットは、量子コンピューターや量子プロセッサーのような量子デバイスによって、光子や電子といった素粒子上に作り出される。つまり、量子インターネットをひと言で説明すると、物理的に離れた場所に設置された複数の量子デバイスのネットワークをまたがってキュービットをやり取りし合うインターネットということになる。ここで重要なのは、すべてが量子力学によってもたらされる風変わりな性質によって支えられているという点だ。
量子インターネットという言葉から、なじみのあるインターネットを思い浮かべるかもしれない。しかし実際のところは大きく違っている。従来の伝達経路ではなく量子チャネルという経路を通じてキュービットを送付するには、何十年にもわたって科学者らに喜びと落胆をもたらしてきた、「量子状態」と呼ばれる、ミクロな世界における素粒子の振る舞いを利用する必要があるのだ。
また、量子インターネットで情報を伝達する方法を支えている量子力学の法則の数々は、まったくなじみのないものばかりだ。事実、これらの法則は奇妙であり、直感に反しており、超自然的な力が働いていると思える時さえある。