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グーグルの「時間結晶」研究と量子コンピューターにみる可能性

Daphne Leprince-Ringuet (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2021-09-06 06:30

 Googleの科学者らは新たな研究論文において、科学的応用分野で量子プロセッサーを活用し、正真正銘の時間結晶を観測したと主張している。


Googleの科学者らは、今回の成果によって現在の量子プロセッサー上で時間結晶の研究を進めていくための「段階的に拡大できるアプローチ」が確立されたと胸を躍らせている。
提供:Marko Aliaksandr/Shutterstock

 「時間結晶」という言葉からSF的なものを想像するかもしれない。実際それはSF的なものだ。時間結晶は研究者らが述べているように、新たな「物質の相」であり、固体や液体、気体、結晶といった相に追加される可能性がある新たな状態として数年前から理論研究が進められてきている。なお、この論文はプレプリントの段階であり、現在は査読を控えている状態だ

 時間結晶を見つけ出すのは一筋縄でいく作業ではない。しかしGoogleの科学者らは、今回の成果によって現在の量子プロセッサー上で時間結晶の研究を進めていくための「段階的に拡大できるアプローチ」が確立されたと胸を躍らせている。

 時間結晶がなぜ興味深いのかを理解するには、物理学のちょっとした知識、特に熱力学第2法則に関する知識が必要となる。この法則は、孤立系で自発過程が進行すると、その系は「最大エントロピー」と呼ばれる状態に向かっていき、そこに落ち着くことを示している。

 例えば、コーヒーの入ったカップにミルクを注ぐと、そのミルクは液面上部にとどまるのではなくコーヒー全体に溶け込んでいき、最終的に系全体が平衡状態になる。これは、ミルクとコーヒーの粒子がランダムに活動し、エントロピーが増大していくさまを示している。

 熱力学第2法則が示す、熱平衡状態へと向かうこの不可逆な流れは、すべての物事が秩序のない、ランダムな状態に向かっていくという事実を端的に表している。時間の経過とともに系は混沌(こんとん)とした無秩序な状態に向かって崩壊していく、すなわちエントロピーの増大は避けられないことなのだ。

 一方、時間結晶は熱平衡状態に落ち着くことがない。ランダムな状態に向かって徐々に秩序を失っていくのではなく、2つの高いエネルギー状態が交互に現れ、その繰り返しが永遠に続いていくのだ。

 バーミンガム大学において物理および天文学の授業を担当するCurt von Keyserlingk氏(Googleの今回の実験には参加していない)は、分かりやすい説明を求めた米ZDNetに対して、入学希望者向けの入門講義で使用しているスライドを数枚取り出し、「たいていの聴講者はこれで理解したふりをしてくれる。そういった点で役立つかもしれない」との注釈とともに説明してくれた。

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