IBM、127量子ビットプロセッサー「Eagle」と「Quantum System Two」の概要明らかに

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2021-11-16 14:24

 IBMは新たな127量子ビットプロセッサー「Eagle」を発表するとともに、同社の次世代量子システム「IBM Quantum System Two」の概要を明らかにした。

IBM's Eagle quantum processor features a 3D architecture and layers so qubits work well together.
提供:IBM

 同社は「IBM Quantum Summit」に合わせてこれらを発表し、同社のハードウェアの進化を示した。また2020年以降、ハードウェアソフトウェアのロードマップを明らかにしている。IBMは、従来のコンピューティング能力では処理できないさまざまなアプリケーションを実行できる、フリクションレス(摩擦のない)な量子コンピューティングが2025年までに可能になると考えている

 IBMの最高量子提唱者Bob Sutor氏は、Eagleは量子コンピューティングをスケールさせていく上で大きなステップとなり、100以上の量子ビットを持つ同社初のプロセッサーだと述べた。

 EagleはIBMの施設で製造されているが、Sutor氏によるとそのボリュームは大きくないという。IBMは現在のところ、同社のシステムでこのプロセッサーを使用している。

 IBMによると、Eagleは量子ビットを単一レイヤー上に維持しつつ、制御コンポーネントを複数の物理階層に配置する新たな技術を活用しているという。Sutor氏は「量子ビットの性質や、量子ビットすべてが連携する必要性から、量子プロセッサーの構築はずっと複雑なものとなっている」と述べた。

 Eagleの3次元パッケージ化アーキテクチャーの肝は、より多くの量子ビットを利用できるようになるという点にある。Sutor氏によると、Eagleを従来のコンピューターで完全にシミュレートすることはできないという。

 IBMはEagleのアーキテクチャーの概要について、ブログで以下のように説明している。

 われわれは、先進的な3次元パッケージ化技術をはじめとするプロセッサーアーキテクチャーを開発するために、「IBM Quantum」プロセッサーの過去の世代で培ってきた技術を組み合わせるとともに、改良する必要があった。このアーキテクチャーは、われわれが計画している1000量子ビットを超える「Condor」プロセッサーを含む今後のプロセッサーの土台になり得るものだとわれわれは確信している。Eagleは、重六角形の量子ビット配置という、「Falcon」プロセッサーで採用されたレイアウトをベースにしており、各量子ビットは隣接する六角形の辺や角に相当する位置にある近傍の2つないし3つの量子ビットと接続される。この接続形態は、近傍にある量子ビット間の相互作用によって引き起こされるエラーの可能性を低減し、実用的なプロセッサーを具現化する上で大きく役立つ。

 Eagleは12月、「IBM Quantum Network」の一部のメンバーが利用可能になる。

 またIBMはQuantum System Twoの概要を明らかにした。これは、量子ビット数が1000を超えるプロセッサーを搭載できるようになっており、単一システム内で複数のプロセッサーを搭載、冷却する能力を有した、モジュール構造を推し進めたコンピューターだという。

 こうした設計思想に基づくQuantum System Twoにより、顧客は全体的な設定に影響を与えることなくシステムの一部を操作し、テストできるようになる。IBMによる最新の量子システムはIBM Researchで2023年に稼働する見通しだ。

 Quantum System Twoのモジュール構造について、IBMは以下のように述べている。

 われわれはこのシステムによってハードウェアの柔軟性を実現し、チップの規模を拡大し続けていこうとしている。また、チームはホリスティックなシステムアプローチを採用し、われわれのハードウェアロードマップに沿った進歩を続けていく中で、今後の「Osprey」や「Condor」だけでなく、未来の量子プロセッサーをサポートしていくために必要となるリソースを理解しようとしている。そしてQuantum System Twoは、スケーラビリティーに優れた新世代の量子制御電子機器と、高密度の低温コンポーネント、配線構造を採用している。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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