海外コメンタリー

IBMの量子コンピューターがドイツに、米国外で初--その可能性

Daphne Leprince-Ringuet (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2021-06-25 06:30

 IBMは5年前、世界に先駆けて5量子ビットの量子プロセッサーをクラウド経由でユーザーに提供した。その同社が今回、ニューヨークにあるデータセンター以外に設置した初めての量子コンピューターについて発表した。


フラウンホーファー研究機構はこのたび、IBMによって設置された同国初の超電導量子コンピューター「Quantum System One」を披露した。
提供:IBM Quantum

 ドイツのフラウンホーファー研究機構の科学者らはこのたび、同国初の超伝導量子コンピューターである「IBM Quantum System One」を披露した。この量子コンピューターは、IBMとの契約に従い、同研究機構のために設置されたものだ。

 IBMの27量子ビットプロセッサーである「Falcon」の1つを搭載したこの量子コンピューターは、数週間前に稼働を開始し、既に同研究機構の科学者らと一部のパートナー企業が利用できるようになっている。そして今後、同研究機構以外のドイツの教育機関や企業も月次契約を結ぶことで研究や教育、訓練目的でこのコンピューターを使用できるようになる。

 またIBMにとって、2020年に締結した同研究機構とのパートナーシップは、同社の量子ハードウェアを世界に向けて展開していく初めての事例になった。同社は2019年にQuantum System Oneを世界初の商用量子コンピューターとして発表したが、これまではニューヨーク州ポキプシーに設置されたIBMのQuantum Computation Centerにクラウド経由で接続するしかアクセス手段がなかった。

 量子ハードウェアを新たな場所に設置するという初の試みは簡単なものではなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的なパンデミックによってハードルはさらに高くなった。IBMにおける最高量子提唱/解説者(CQE)であるBob Sutor氏によると、通常の場合であれば重要な部品をドイツに発送した後、社内の専門家チームが現地に出向いて量子コンピューターを組み立てるという手順になるものの、パンデミックのせいで今回はすべての作業を遠隔地から統制する必要があったという。

 IBMのエンジニアらは、米航空宇宙局(NASA)の手法に着想を得たリモートアセンブリーを実行しなければならなかった。Sutor氏は米ZDNetに対して、「近くに行って『これをやってくれ』と頼むことのできない数千マイル先にいる人々をどのように訓練すればよいのだろうか。われわれはリモートアセンブリーですべてを組み立て、マシンを稼働させる段階にまでこぎ着けられるよう、現地にいるチームをリモート形式で訓練しなければならなかった。その結果われわれは、現地に赴くことなく世界中にこれらのシステムを設置するための新たな技法を開発した。そしてそれはうまく機能した」と続けた。

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