中国が向こう数年間に注力する経済上のロードマップを明らかにしている。政府が推進している最も積極果敢な目標には、量子テクノロジーにおける重要なブレークスルーに関するものも含まれている。その目標が達成された暁には、同国は量子技術分野の超大国としての確実な地位を手にするだろう。

中国は量子コミュニケーションに対する果敢な取り組みを続けており、さらなる加速に向かってまい進している。
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2021年は中国の第14次5カ年計画が始まる年、つまり2025年までの同国の経済開発に向けた目標と戦略が決定される年だ。その草稿は政府公式の勧告団体である中国人民政治協商会議(CPPCC)との共同で作成された。
量子技術分野の科学者でありCPPCCのメンバーでもある潘建偉氏によると、この計画には「量子情報テクノロジーに代表される、最先端の科学及び技術に関する国家の主要プロジェクト」が含まれているという。
中国はその中でも量子コミュニケーションに対する果敢な取り組みを続けており、さらなる加速に向かってまい進している。中国はその計画の目標の1つとして、古典的な通信テクノロジーに匹敵する長距離高速量子通信システムの開発を挙げている。
量子ネットワークは、物理的に切り離された量子デバイス間で量子ビット、すなわちキュービットの形態をとった情報を交換可能にする、量子通信システムの中核をなす技術だ。このテクノロジーは今のところ極めて初期の段階にあるが、研究コミュニティーから熱い視線を注がれている。その応用例として、小さな量子デバイスを多数接続したネットワークによって、現時点では1台の量子コンピューターでは処理できないような問題の解決に向けて取り組めるようになるというものが挙げられる。
世界中の政府機関が量子通信や量子ネットワークに積極的に投資している。米国防総省(DoD)は最近、本格的な量子インターネットの構築に向けた段階的戦略を公開した。また欧州連合(EU)で2018年に結成されたQuantum Internet Allianceも大規模な量子ネットワークの構築を目標に掲げている。
量子ネットワークの構築には、今のところまだ完全には解決されていないエンジニアリング上の難問が存在しているものの、一部の地上ネットワークは光ファイバーケーブルを用いて既に構築されている。その一例として、米国に拠点を置く科学者らによってシカゴ近郊に構築された52マイル(約83km)に及ぶシステムを挙げることができる。ただ、このネットワークの大規模化は困難であるため、「長距離」通信システムの構築は、中国も目指しているように、特に野心的な目標となっている。
量子ネットワークを構築するもう1つの方法は人工衛星を利用することだ。中国の科学者らは長年にわたってこの道を模索してきている。2017年に同国の量子科学実験衛星「墨子」(Micius)は、745マイル(約1200km)離れた地上局間でのキュービット送信に成功した。これは、量子ネットワークを利用した究極のセキュリティを実現する上で必要となる次世代暗号鍵を量子鍵配送(QKD)というプロセスによって生成する実験の一環として実施された。人工衛星を介した量子ネットワークは、中国の次期5カ年計画においても重要な研究課題の1つとなる。