Linuxディストロ「SLES」新版、ダウンタイムゼロ目指す--13年の長期サポート

吉澤亨史

2014-11-19 17:12

 ノベルは11月13日、エンタープライズ向けLinuxディストリビューションの新版「SUSE Linux Enterprise Server(SLES)12」を発表した。同社の代表取締役社長である河合哲也氏は、極めて高いレベルのミッションクリティカル性が要求される分野、または極めて高い性能が要求されるハイパフォーマンスコンピューティング(High Performance Computing:HPC)分野でもLinuxが使われるようになり、これらの分野を「ハイエンドLinux」と呼ぶが、SUSEはハイエンドLinux市場のリーディングカンパニーであるとした。

 SUSEは全世界の市場でメインフレーム用Linuxの80%以上、SAP用Linuxの70%以上、HPC用Linuxの50%以上のシェアがあるという。最近ではパブリッククラウドにより、社外のクラウドに出せるものはどんどん出していく傾向にあり、そのインフラには柔軟性、俊敏性を高め、よりオープンで低コストであることが求められており、Linuxがエンタープライズ向けのハイブリッドクラウド環境の統一基盤に進化することが期待されていると説明した。

河合哲也氏
ノベル 代表取締役社長 河合哲也氏
羽田勝治氏
ノベル SUSE事業部 テクニカルセールスマネージャー 羽田勝治氏

 しかし、Linuxはダウンタイムが発生する。そこで、Linuxを真の“エンタープライズOS”として再定義するためには、計画停止や計画外停止を含むダウンタイムを限りなくゼロに近づけていく必要があり、そのためには“高可用性(HA)の再定義”が必要であるとした。

 SLES 12では、新機能でこれまでにないレベルのダウンタイム極小化を実現しており、SUSEには20年以上ハイエンドLinuxにフォーカスしており、一日の長があるとした。エンタープライズで使えるIaaS環境構築管理ソフトウェア「OpenStack」の開発にも挑戦しているという。

 同社SUSE事業部のテクニカルセールスマネージャーである羽田勝治氏は、これまでミッションクリティカルな最高品質のエンタープライズOSとハイブリッドクラウドの関係を実現してきたが、その関係は“AND”であった。SLES 12はその関係を“ON”にするためにあらゆる環境でダウンタイムをゼロにするとした。

 羽田氏は、ダウンタイムゼロを目指すSLES 12のキーテクノロジとして「Btrfs」「Snapper」「SUSE Linux Enterprise Live Patching(kGraft)」「AppArmor」「High Availability Extension」「Geo Clustering」を挙げた。

 ファイルシステムのBtrfsとスナップショット管理ツールのSnapperは、システムメンテナンスや変更作業時に想定外の問題が発生した際に、正常稼働の状態にワンクリックでロールバックできるという。kGraftは、Linuxカーネル用ライブパッチング技術で、サービスを中断することなくカーネルをアップデートできる。これらで計画停止を最小化するのに有効な機能としている。

 AppArmorはSLES 9から搭載されているセキュリティ機能で、ゼロデイ攻撃にも対応する。今回、外部の脅威によるシステムダウンの防御と、特にUDPを利用するアプリケーションのプロファイル設定などが強化された。High Availability ExtensionとGeo Clusteringは、高可用性と災害復旧(DR)のための機能で仮想と物理、その混在環境をサポートする。距離無制限のDRを実現しているという。この2つが計画外停止を最小化するための機能となる。

 SLES 12ではライフサイクルも延長される。従来より3年間延長され、ジェネラルサポート10年、延長サポート3年の合計13年のライフサイクルとなった。これは「SUSEが成熟してきたため」だと羽田氏は言う。このほかにも多くがアップデートされているが、特に「IBM Power8(PPC64 リトルインディアン)対応」、テクニカルプレビューながらコンテナ管理ツール「Docker」をサポートした。プレビューであるのは「もう少し熟成が必要と判断した」(羽田氏)ためだという。

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