今から50年前の1973年、世界は全く異なる場所だった。まず、同年の地球の人口は40億人に満たなかった(当時17歳だった筆者もその1人だ)。一方、現在の人口は約80億人で、半世紀の間に100%増加している。国際連合(UN)の最新の予測によると、世界の人口は2030年に約85億人、2050年に97億人、2100年には104億人に増加する可能性があるという。
この大幅に増加した人口(特に先進国に住み、最大のエコロジカルフットプリントを占める人々)が資源を消費し、二酸化炭素を排出することで、気候変動と生物多様性の損失を招き、人類の文明の存続が脅かされている。
ある年における生態系資源およびサービスに対する人類の需要が、その年に地球が再生できる量を超過する日である「アースオーバーシュートデー」は、1973年には12月1日だったが、2022年は7月28日だった。
テクノロジーは過去50年間ですっかり様変わりした。1973年には、メインフレームとミニコンピューターがまだ一般的に使われており、パーソナルコンピューターは計画段階から脱したばかりだった。MITSの「Altair 8800」の発売はその1年後で、「Apple I」は1976年に登場した。当時、ARPANETとして知られていたインターネットは、ネットワークの全体図を1枚の紙に描けるほどの規模で、1973年に初めて外国(ノルウェー)との接続を確立したが、ワールドワイドウェブが登場したのは1989年のことだ。史上初の携帯電話による通話は、MotorolaのMartin Cooper氏によってニューヨークで米国時間1973年4月3日に行われた。電話機の重量は4.4ポンド(約2kg)だった。この半世紀における驚異的な進歩を表す例は、他のテクノロジーセクターでも多数挙げられるだろう。
過去50年間で一貫しているのは、テクノロジーの進歩自体が人口増加と資源消費の配分の影響を緩和するわけではなく、多くの点で正反対の影響を与えているという点だ。この50年で誕生し、使用されてきたテクノロジーの多くは、地球温暖化の大きな要因となっている。
現在、危険信号が世界中で点滅している。過去8年間は、観測史上最も気温が高い8年間だった。また、この2年半の海面上昇は、衛星による計測が約30年前に開始されて以降の海面上昇の10%を占める。2022年には多くの国で記録的な熱波が観測された。降雨量は、一貫して平均を下回っている地域(東アフリカ)もあれば、前例のない水準の地域(パキスタン)もある。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability」レポートで次のように書いている。「地球温暖化は、短期的(2021年~2040年)には摂氏1.5度に達し、複数の気候災害が確実に増加して、生態系と人類が複数のリスクにさらされるだろう」
人間には、テクノロジーをもっと効果的に展開して、より持続可能な世界経済を生み出せるだけの聡明さがあるのだろうか。テクノロジーをより持続可能な方法で構築し、使用することはできるのだろうか。
主にこうした疑問をさまざまな角度から取り上げるのが、米ZDNETの今回の特集だ。では、もう少し状況を見てみよう。
技術文明の運命はどうなるのか
ロチェスター大学の天体物理学教授であるAdam Frank氏は、秀逸で理解しやすい2018年の著書「地球外生命と人類の未来 人新世の宇宙生物学」で、理論上の技術文明が惑星の変化する状況にどう対応するかについての数理モデルを説明した。分かりやすくするために、このモデルには2種類のエネルギー資源しか含まれていない。1つは惑星への影響が大きいもの(化石燃料など)で、もう1つは影響が小さいもの(太陽エネルギーなど)だ。惑星の気温上昇が原因で、文明はある時点で影響の大きいエネルギー資源から影響の小さい資源へと切り替える。このモデルでは、エネルギーを消費する種の集団を支える惑星の能力について、さまざまな結果を検討する。
理論上の世界のさまざまな状況下における人口と惑星温度の推移。
提供:W W Norton, from Light of the Stars by Adam Frank