ガートナージャパンは3月1日、アプリケーションに関する展望を発表した。ビジネス環境が急速に変化する昨今、日本企業にはDXを通じた競争力の強化が求められているとする一方で、2026年になっても競争力強化につながるDXを実現する日本の大企業は10%に満たないと予測する。
ガートナーでは、DXについて「(クラウドコンピューティングなどを活用した)ITの近代化からデジタルの最適化、デジタルビジネスの新たなモデルの考案までを指す」と捉えている。アナリストでシニアディレクターの川辺謙介氏は「DXの本質は、デジタルテクノロジーを活用することで新たなビジネスモデルを創出することであり、新たなビジネスモデルは、自社の戦略に沿った、競争上の優位性を確保できるものであることが重要」と述べる。
同社によると、競争優位性を確保する要素には外部環境と内部環境があり、内部環境についてはデジタルテクノロジーを活用して業務改革を推進し、競争力を高めていく必要がある。そして、それには非効率なアプリケーションの改善/刷新や、付加価値のあるエクスペリエンスの提供などのアプリケーション改革を実行して、内部からの競争力強化を確保し、ビジネス変革に貢献することが重要だという。「それらを担うアプリケーションやソフトウェアエンジニアリングのリーダーには、大きな期待が寄せられている」(川辺氏)
シニアディレクターの片山治利氏は、競争力のあるDXに成功する企業の共通点として「競争力強化を目的としたレガシーアプリケーションの近代化」「ガバナンスの効いた開発プラクティスの民主化」「効果的なデータ管理と利用/活用による合理化」――の全てに取り組んでいると指摘する。
現在、多くの日本企業が既に何らかのDXに着手しているものの、DXの取り組みの成果はコスト削減や作業の効率化/自動化の実現のような業務改善レベルのものが多い状況。企業のビジネスの変革までを目指している企業の割合は少なく、2026年に至っても競争力強化につながるDXを実現する日本の大企業は10%に満たないと同社は見ている。
一方、デジタル時代においては企業と顧客の距離がいっそう短くなり、またデリバリーのサイクルも短縮されているため、デジタルテクノロジーを活用した顧客応対プロセスの抜本的な改革が求められている。しかし、多くの日本企業では個別業務に注力する属人的なプロセスが数多く残っており、アプリケーションを活用して顧客に付加価値を提供するというビジネス本来の目的を達成できていない状況が見られるという。
この点について、川辺氏は「競争が激化する環境において一層のビジネス成果をもたらすには、ビジネスを顧客中心に転換する必要がある。すなわち、顧客の望む商品/サービスを競合他社に先駆けて、顧客が望む形で提供することが求められる」と話す。
ガートナーでは、先進的な商用アプリケーションを個々人の考え方を尊重する個別最適のアプローチではなく、「デリバリー速度」「再現性」「スケーラビリティー」といったデジタルテクノロジーの長所を活用する体系的なアプローチで進める方が、中長期的には高い競争力を獲得できると考えられるとの認識を示す。その上で、2026年にかけて顧客応対プロセスの体系化に取り組む日本企業の80%以上は、DXを通じてビジネス目標を達成し、市場競争力を勝ち取るとする一方で、旧態依然あるいは属人的な顧客応対プロセスを継続する企業は大きな後れを取ることになる、と警鐘を鳴らす。