ガートナージャパンは1月26日、ソフトウェア製品やクラウドサービスの値上げに対して企業が講じるべき短期的、長期的な方策を発表した。典型的なリスク対応方針となる「回避・軽減・移転・受容」の4原則で講じるべきだとする。
同社によると、国内ソフトウェア/クラウド市場の65%を海外ベンダーが占める。為替変動や世界的な物価高を背景に、ベンダー各社が国内向けライセンスやサブスクリプションの価格を相次いで大きく値上げしており、2023年の契約更新や契約追加時に20%以上の値上げを通達されるケースがあるという。これが国内ITユーザー企業のIT予算計画に影響を与えている。
アナリスト シニア ディレクターの土屋隆一氏は、「値上げリスクに対し、リスクへの典型的な対応方針『回避、軽減、移転、受容』の観点で、短期的・長期的な対策を講じる必要がある」と指摘する。
2023年に締結する契約などでの短期的な対策は、回避策では「現価格での契約を前倒しで交渉し現価格の適用の継続を試みる」、軽減策では「不要な機能/サポートや余剰ライセンスの排除による無駄買いの削減など短時間で結論を出せる範囲で購入要件を最小化させる」、移転策では「値上げ対象の製品やサービスについて自社の海外拠点でも見積もり、海外の方が価格優位なら現地で購入させる」、受容策では「ベンダーに値上げ要素の開示を求め妥当性を評価する」――を挙げる。これらは、すぐに対応できるものから優先的に取り組むべきだという。
長期的には、社会情勢の先行きの不透明さが増しており、物価や為替の変動が続く可能性もあることから、2024年以降も海外ベンダーが短期間に価格を改定するリスクが続くだろうという。国内ITユーザー企業は、(1)他製品への移行を選択肢とするための情報武装を行う、(2)購入予約や更新時の価格上昇の上限を設定する、(3)値下げ時に利益を享受できるよう交渉する、(4)経理や財務部門とIT予算や価格変動の許容枠に関して協議する――などの対策が考えられるとしている。
アナリスト バイス プレジデントの海老名剛氏は、値上げによるコストの増加を完全に吸収することは簡単ではなく、予算不足によって購入計画が狂う可能性があると警鐘を鳴らす。値上げの拒否が唯一の解ではなく、むしろベンダーに高品質な製品/サービスの提供を続けさせる上で一定の値上げを受容する必要もあるとしつつ、説明のつかない大幅な値上げには、ベンダーに対して合理的な説明を追求すべきだと述べている。
値上げ対策のポイント(出典:ガートナージャパン)