本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ガートナージャパン ディスティングイッシュトバイスプレジデント、アナリストの亦賀忠明氏と、Trellix セールスエンジニアリング シニアディレクターの櫻井秀光氏の発言を紹介する。
「クラウドはサービス部品の集合体である」
(ガートナージャパン ディスティングイッシュトバイスプレジデント、アナリストの亦賀忠明氏)
ガートナージャパン ディスティングイッシュトバイスプレジデント、アナリストの亦賀忠明氏
ガートナージャパンは12月12~13日、「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」を都内で開催した。亦賀(またが)氏の冒頭の発言はその講演において、クラウドコンピューティングの最新トレンドについて話した中で「クラウドとは何か」を端的に説明したものである。
亦賀氏は30分余りの講演で60枚のスライドを使って話した。ここではその中から筆者が特に興味深く感じたスライドの図表を3枚取り上げ、同氏の視点を紹介したい。
1枚目の表1は、「クラウドとは何か」について描いたものだ。左側に記された「従来型のアウトソーシング」や「仮想ホスティングの延長」はクラウドではなく、右側の「サービス部品の集合体」が本物のクラウドであると説く。また、同氏は、クラウドは「預ける、任せる」ものでなく、「利用する」ものだと強調した。クラウドにおけるこの捉え方については、同氏はクラウドが注目され始めた頃から一貫して発信している。筆者も全く同意するが、特に最近ではIaaSとPaaSの領域を合わせた形でサービス部品の集合体としてどんどん広がっている印象が強い。
表1:クラウドとは何か(出典:ガートナージャパン亦賀氏の12月講演資料)
2枚目の表2は、レガシーマイグレーションが失敗するケースと成功するケースの要因を挙げたものである。亦賀氏の市場分析に基づいた内容で、興味深い具体例が列記されている。失敗例で筆者もこれまでの取材でよく耳にした項目を3つ挙げると、1番の「現状の業務システムの要件を変えず、マイグレーション先に完璧なコピーを作ろうとした」、3番の「ツールでうまくアプリが変換できるということを安易に信じた」、そして7番の「ベンダー任せ」だ。特に7番は9番と10番の失敗も引き起こす「諸悪の根源」ともいえよう。この表2の内容は、レガシーマイグレーションに関わる読者諸氏にはじっくり読んでみていただきたい。それぞれの状況において、成功のヒントを見出せるかもしれない。
表2:レガシーマイグレーションの失敗と成功の要因(出典:ガートナージャパン亦賀氏の12月講演資料)
3枚目の表3は、ハイパースケールのパブリッククラウド基盤を提供する「AWS」(Amazon Web Services)、「Azure」(Microsoft Azure)、「Google Cloud」(Google Cloud Platform)の3大サービスの印象を列記したものだ。亦賀氏は「ユーザーがこういう見方や印象を持っているという内容」と注釈を入れていた。こう見ると、それぞれの特長が浮き彫りになって興味深い。筆者は内容もさることながら、項目数(AWS7個、Azure4個、Google Cloud3個)の違いが気になった。1つの項目の内容量にもよるので、あまり意味はないかもしれないが。それも踏まえて、この表3も3大サービスをざっくりと捉える上で参考になりそうだ。
表3:3大クラウドサービスの大まかな違い(出典:ガートナージャパン亦賀氏の12月講演資料)