トーバルズ氏ら、批判の多いsystemdについてコメント

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2014-09-22 11:49

 LinuxやUNIX開発者でないなら、systemdというプログラムの存在を知らないだろう。systemdはLinux向けのシステムでサービスマネージャの機能を持つ。しかしLinux開発者コミュニティーの間では、これまでのsysvinitデーモンに変わるものという以外には大きな魅力はないと見られている。

 systemdを開発したのはRed HatのLennart Poettering氏とKay Sievers氏で、Linuxシステム起動時にどのプログラムが動くのかを制御する標準的なプロセスを提供する。「System V」、「Linux Standard Base(LSB)」のinitスクリプトとの互換性があるが、これらの古いものを置き換えるものと位置づけられている。

 systemdは1つのシステムにたくさんの機能を詰め込んでいるため、批判派も多い。批判は次のようなものだ。「クラッシュしてシステム全体をオフにしてしまうと想定されるシナリオが無数にある。それだけではない。カーネル以外のシステムのアップグレード時に再起動が必要になることも意味する。Windows 9 Linuxシステムへようこそ!」


多くのLinux開発者はsystemdについて、1つのinitプログラムとしては多くの機能を詰め込み過ぎだと考えている。

 たとえば、バイナリ形式で保存されるsystemdのジャーナルファイルは破損を招く可能性が高いという。また、systemdは他のUNIX系OSと互換性がないという指摘もある。「モノリシックで、過度なデスクトップ主導」のデザインは欠陥があり、これはLinuxでの利用にあたって好ましくない選択肢となるという。

 Pettering氏はこれまで何度も懸念に応じてきたが、批判はやまない。だが奇妙なのは、多数の批判にもかかわらずsystemdは幅広く採用されているのだ。「GNOME」デスクトップでは3.8よりsystemdが必須となっているし、Red Hatのコミュニティ版Linuxである「Fedora」は最初にsystemdをデフォルトとして採用したディストリビューションだ。その後「Debian Linux」、「OpenSUSE」、「Ubuntu」などもsystemd採用に動いた。

 ではLinux開発を率いるリーダー達はsystemdをどう見ているのか。聞いてみたところ、以下のような回答をもらった。

 Linus Torvalds氏:「特にこれといった意見は持っていない。コア開発者の数人がsystemdを問題と感じているようだったが、私からみると彼らはバグや互換性に過度に神経質になっているように見える。設計の細かいところについては、一部まともではないものがあると思う(たとえば、バイナリ形式のログは好きではない)が、これらはディテールであって大きな問題ではない。

 一方でLinuxカーネル開発者でGoogleに勤めるTheodore "Ted" Ts'o氏は、systemdは潜在的に問題が多いものとみているようだ。「結論としては、systemdは一部のユースケースで重要になる問題の解決を試みている。そしてこれが、システムの他の部分の仮定がその通りにいかないという事態を招く」(同氏)

 Ts’o氏はこれに加え、systemdの動向が急ピッチで進みすぎていることも懸念しており、これまでの方法を好むユーザーと開発者が離れていったGNOME 3になぞらえて以下のように述べた。「(GNOMEは)一部のLinuxデスクトップユーザーのみに注意を払っており、タッチ画面デバイスの関心を重視してデスクトップの操作方法を一部切り捨てた経緯がある。GNOMEが支援するユーザー層に入らないユーザーは、不運だったというとになる」。

 GNOME 3に不満を持ったユーザーは「Cinnamon」、「XFCE」、「KDE」など他のディストリビューションに乗り換えた。Ts’o氏は「悪夢のようなシナリオはまだ起こっていない」とし、現実のものになるかどうかはわからないがそれを危惧していると続けた。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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