ITを体系的に理解するということ

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2012-08-28 12:00

 経営者にどうやってITを説明するか——。

 ガートナー ジャパン株式会社 コンサルティング部門 マネージング・パートナーの宮本認氏が執筆する本連載。今回からビジネスのプロに対して、ITを体系的に解説していきます。

 この連載は以前の「部長シリーズ」と同じように会話形式で進みます。今回からは、お相手がビジネスのプロ=経営者ということで、「副社長」に登場して頂きましょう。

 副社長はITが重要であることは理解していますし、ITに対する判断でもポイントを外しません。しかし、それでも「どんなITがいいのか?」という疑問に答えを出したいようです。(ZDNet Japan編集部)

“どんな”ITならいいのか?

画像はイメージです

「宮本君……最近調子どう?」
「副社長、ご無沙汰しています。僕は、そうですねぇ……まぁまぁです。副社長は相変わらずカッコいいですね」
「ふん……調子のいいこと言いよって。でね、宮本君。ちょっと付き合ってほしいことがあるんだが」
「何をすればいいんですか?」
「ふふ……知りたいか? あのだね、私、ITのことを勉強したいんだよな」
「は?」
「いや、だから、うちの会社もコンタクトセンターとかウェブとかさ、そういうのも使って売ってるだろ? それに、請求書とかだってシステムで出してるだろ? お客様からのクレームもシステムで管理してるだろ? PLもITから出てるだろ? お給料だってITで払ってるしさぁ。そこまでやっといて、知らないっていうのも、何かおかしいなって、この前知り合いの社長さんに言われたんよ」
「はぁ」
「それで、実は本も買ってみたんだ。一応、目を通してみたんだけど、今一つわからなくてなぁ」
「副社長、お言葉ですが、僕から見て、こういうのもなんですけど、副社長は十分聡明で、ITのことも十分ご理解されていると思います。以前、ITのグランドデザインのお手伝いをさせて頂いた時、ヒアリングや報告で頂いた副社長のコメントは、僭越ですが本当に感心して伺っていましたから」
「君、なんか今日は違うじゃない……。でもな、そりゃあ私だって一応経営者ですから、システム部長が持ってくる計画や相談には、経営者の立場でそれなりに答えますよ。それが仕事でしょ? それに私、コンピュータって嫌いじゃないけん、システム部長が言ってること、なんとなく分かるんだよね」
「そうだと思います」
「でも、自分の中で今一つ腑に落ちていないのは、ITがなきゃ仕事が回らんっていうのはわかるんだが、じゃあ、どんなITならいいのか?ってのは、わからんのだよねぇ」
「なるほど。副社長、一つステージが上がってますね」
「ん?」
「いえ、副社長の問題意識はわかりました。ですが、お言葉ですが、それを一生懸命考えるのが情報システム部長の役割だと思いますし、A部長は十分しっかりした方じゃないですか? それで、何でいまさら僕が……」
「そうなんだが、そうすると、私はA部長に任せっきりってことになるだろう。別にA部長のことを信頼してないってわけじゃないんだが、最近は個人情報が漏洩すると新聞にも載る世の中だ。BCP(事業継続計画)とかもあるだろ? 何か起きると、説明するのは私なんだよ。そういうの全般、任せっきりってのも、それはそれで良くないと思っているんだよな……宮本君もそう思うだろ? 君は、私のブレーンの一人じゃないの?」
「あぁ……副社長。そう思って頂けることは嬉しいんですけど、うぅん……副社長、世の中には経営者はITのことを知らなければいけないってことを言う論調はあるんですが、個人的には、あくまで個人的にはですよ、経営者は経営全体のことを一生懸命考えて頂ければいいと思っているので、副社長は今のままでいいような気がしているんですが」
「それは宮本君の意見? ガートナーの意見? どっち?」
「いやぁ……一般的っていうか……」
「何? もしかしてキミ、わしの頼みを断ろうとしてるんか?」
「そんなぁ???、まさか」
「じゃあ、教えなさいよ」
「……承知しました……」
「なんじゃ? いつもの歯切れがないじゃないか」
「えぇ、副社長にお付き合いするのは、全然いいんですけど、では何をお話しするか?ってことは、すごく難しくて、まったくイメージができていないんですよね」
「ほぉ、たまにはいいこと言うじゃないか。もしここで『PCが』とか『スマートフォンが』とか話を始めたら、ハッ倒してやろうかと思ってた。で、どうするの?」

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