アジャイル開発を「アジャイル」に保つための10のルール

Joe McKendrick (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2012-10-31 07:30

 Scott Ambler氏とMatthew Holitza氏は、新しく執筆した電子書籍「Agile for Dummies」の中で、本当にアジャイルな開発会社になるために必要なステップについて説明しているが、真のアジャイルを実践するためには、組織全体で取り組む必要があるという。

 同氏らは「アジャイル開発」の定義として、「プロセス全体を通じて価値を保つために、頻繁にリリースしながら高品質なソフトウェアを提供する、段階的に進む繰り返しアプローチである。この手法は、個人や協調作業、そして変化に対応する能力に高い価値を置いている」と説明している。この著書は、もう作られてから10年になる「アジャイルソフトウェア開発宣言」で説明されている、中心的な価値や原則の多くを反映している。

 Ambler氏とHolitza氏は、組織がアジャイル戦略を導入しようとする際に必要となる、成功のための戦略について説明している。

1.アプリケーションを「制作」した後のことを考える。アプリケーションを作る場面だけでなく、ライフサイクルの文脈から、取り組みについて考えるべきだとAmbler氏とHolitza氏は警告する。「ソフトウェアを作るのと同じ方法でしか組織を変えられないのであれば、その組織は必ずしも『アジャイル』とは呼べない」。なぜなら、開発チームがヘルプデスクや運用チームが対応できるよりも早いペースで新しいリリースを出してしまう可能性があるからだ。その結果、「ウォーターフォール」は生き残り、下流の人々は洪水にさらされる。

2.「アジャイルゾンビ」になってはならない。クラスやセミナーに出席して、そこで学んだいくつかのポイントを実践すれば「アジャイル」になると思われていることが多い(ちなみに、多くのSOAのプロジェクトでも同じ考え方がはびこっている)。すべての組織は違っており、しかも常に進歩している。継続して学び、改善していくことこそが、アジャイルの中心だ。Ambler氏とHolitza氏は、「アジャイルは、事前に定められた手順や、慣行の集合体ではない。アジャイルとは、慣行によって支えられる考え方であり、同じアプローチは2つとない。すべてのニーズを満たす手法は存在しない」と述べている。

3.とにかく計画。まず、アジャイルだからという理由でアジャイルを導入しないことだ。組織は、次のような質問に答えられなくてはならない。「なぜ素早くなりたいのか、素早さによって、どのような恩恵が得られるのか。素早さをどのように実現し、どう測るのか。そのための文化的、技術的、ガバナンス上の障害にはどんなものがあり、どうすればそれを乗り越えられるか」。取り組みを明確な形で示し、素早さを実現する際の障害を解決する方法を含む計画がなければ(例えば、フォーターフォール方式の手順のチェックポイントを取り除く、必要な他の組織からの支援を得るなど)、その取り組みを実現し、人員を割り当て、予算を付け、障害となるものを管理し、役員の支援を継続して得ていくことは難しい。

4.組織全体で取り組む。そのとおり、これにはマーケティング部門の人間や、会計をやっている人間も含まれる。これは、SOA支持者たちにも必要なやり方だ。もちろん、1つのチームでだけアジャイル開発の取り組みを始める方が、手っ取り早いし痛みも少ない。しかし、それは結局、アジャイルではないのだ。「1つのチームだけでも、アジャイルの手法からある程度の恩恵を受けることはできるが、本当に成功するためには、ソリューションを提供するためのプロセス全体を考えていく必要がある。そして、そのプロセスには多くの人が関わっている。アジャイルになるためには、組織全体の文化を変えなくてはならない」

5.幹部役員の支持を得る。IT関連だけでなく、すべての事業部門で支援者を見つけることが大切だとAmbler氏とHolitza氏は述べている。特に重要なのは、幹部役員からの支持を得ようとすることだ。「アジャイルを効果的に導入するためには、最上位の役員の支持が必要だ」という。なぜなら、彼らこそが財布のひもを握っており、実現に必要な資源を動かすことのできる人たちだからだ。

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