ボーランドは3月3日、東京コンファレンスセンター・品川において「Borland Developer Conference Tokyo 2006」を開催した。2月初旬に発表された、ボーランドによるIDE事業の売却決定は、同社のツールを利用する日本の開発者にもショックを与えたが、午前中に行われた基調講演では、この決定がボーランドにとって最善のものであること、またIDE事業を引き継ぐ新会社の設立を予定しており、ツールの開発とサポートは継続して行われていくことが繰り返し説明された。
ボーランド代表取締役社長の河原正也氏は冒頭、「ツール事業とソフトウェアデリバリーの最適化管理(Software Delivery Optimization:SDO)の事業では、必要なビジネスモデルが全く異なる。それぞれの顧客のニーズに迅速に対応していくためには、これらの事業を分離することが最善との結論に至った」と説明した。
- ビデオで登場した米ボーランドCEOのTod Nielsen氏
ビデオメッセージを寄せた、米ボーランドのCEOであるTod Nielsen氏も、その中で「ボーランドがソフトウェアデリバリーのプロセスに注力していく中で、IDE事業を分離することは、決してボーランドがIDEに対して背を向けたということではない。我々はIDE事業を将来的に成功に導くための売却先を探している。事業を分離することによって、IDEビジネスはこれまで以上に多くのフォーカスを得るようになるだろう」と述べ、今回の売却決定が同社のアプリケーションライフサイクルマネジメント(ALM)とIDEの両事業に対して、良い結果をもたらすためのものであることを強調した。
続いて登壇した、米ボーランドのデベロッパーリレーションズバイスプレジデント・チーフエバンジェリストであるDavid Intersimone氏は、ここまでの内容を受ける形で「IDE事業の売却先については多くのうわさが流れているが、私たちは、デベロッパー製品に投資をしてくれ、我々を含む従業員、ユーザーにとって最もメリットを与える投資家を求めている」とし、IDEツール事業を専業とする新会社の設立を目指していることを示唆した。
「事業を分離することによって、我々は、よりIDE製品の開発に集中することができる。マーケティング面も強化され、注目も集められる」(Intersimone氏)
また、ALM事業を行うボーランドとIDE事業を継続する新会社は、両社の持つ技術のシェアや製品間のインテグレーションなどによって、強固なパートナーシップを維持していくとした。
Delphi/C++ Builder、JBuilder、InterBaseといった製品の今後のロードマップも紹介された。特にDelphi/C++ Builderに関しては、「Highlander」と呼ばれる.NET 2.0対応の製品を2007年に、「Delphi for Vista」と呼ばれるWindows Presentation FoundationやWindows Communication Frameworkに対応した製品を2007年中旬に、「Delphi/C++ for Win64」と呼ばれるWin64 API対応の製品を2008年にリリースするといった中期的な計画を示し、今後の開発が継続して行われていく点を改めて強調した。
デベロッパーコミュニティであるBorland Developer Network(BDN)の活動状況の報告も行われ、特に日本に対しては、BDNに存在するドキュメントの日本語化や、日本語試用版の提供、ドキュメントやヘルプの翻訳品質の向上といった活動を継続的に行っていることに言及。今後も、製品のローカライズスピードの向上やBDN自体の日本語対応などを進めていくとした。また、日本のコミュニティーメンバーに対して、BDNに存在する記事の日本語訳や、日本語による記事の執筆などによって、コミュニティー活動を援助していってほしいと訴えた。