教育現場でのiPod利用シーンとしては、語学学習を思い浮かべる場合がほとんどだろう。日本語版iTunesのポッドキャストランキングを見ても、英語学習ができるようなコンテンツが数多く上位にランキングされており、iPodを語学学習に利用しているユーザーが多いことが見て取れる。前回特集した大阪女学院が、語学関連の講義とiPodをうまく連動させていることからも、iPodは語学学習に適していると言える。
一方、2005年4月にiPod Shuffleを全学生に配布した名古屋商科大学には、一風変わった導入理由があった。語学学習に活用することはもちろんだが、同校がiPodを配布した一番の理由は、「情報教育を強化するため」であった。
古くから情報教育に注力
名古屋商科大学がiPodの導入に至った話を始める前に、同大学のこれまでの情報教育に関する歴史をおさらいしておこう。名古屋商科大学は、経営やファイナンスなど商学系が中心の文系大学だが、早くからコンピュータをビジネスに役立てるための取り組みを推進していた。
情報教育の推進に力を入れる名古屋商科大学 助教授の栗本博行氏 |
その一環として同校では、まだコンピュータがあまり一般家庭に普及していなかった1990年より、約4000人の学生全員に対してコンピュータを無償配布していたのだ。当時学生に配布したコンピュータは、デスクトップ型のIBM 5530Z-09機。その2年後となる1992年、「デスクトップは自宅での利用が中心となるため、状況がわかりにくい。大学に持ち込めるようなマシンを配布して、授業内でも活用すると共に、学生の利用状況なども把握したい」という理由から、配布マシンをアップルコンピュータのPowerBook 100へと変更した。
名古屋商科大学 助教授で経営企画室長の栗本博行氏は、当時の状況について「PowerBookは非常に高価なマシンだったが、当時はWindows 95も出ておらず、使いやすさからPowerBookを選択した」と話す。
その後インターネットが登場し、インターネット初期段階の1994年にはモデム内蔵のPowerBook 165に配布マシンを切り替えた。また1996年には、休講情報などを紙で張り出す学内掲示板をすべて撤去、電子掲示板のホームページを開設することで、学生のコンピュータ利用を促した。
さらに、2002年には無線LANカードのAirMacを配布し、学内で無線LANが利用できるよう、AirMacベースステーションを設置した。現在ではこのベースステーションが学内に約400台設置されており、「体育館などの特殊な場所以外であれば、学内のどこからでもインターネットにアクセスできる」(栗本氏)という。「コンピュータを学校に持ち込む学生が一気に増加したのは、無線LAN環境が整った時期だ」と栗本氏は振り返る。