日本マーキュリーコンピュータシステムズ(マーキュリー)は4月14日、ソニー、東芝、IBMが共同で設計したプロセッサ「Cell Broadband Engine(Cell BE)」と、マーキュリーの提供するCell BEの評価開発システムを紹介するセミナーを開催した。
マーキュリーは米国マサチューセッツ州に本社を置き、マルチプロセッサ環境向けソフトウェアの開発実行環境、技術開発などを手がける企業。防衛システム、医療システム、半導体装置などの幅広い事業分野に対してソリューションを提供している。
同社ではIBMとのアライアンスのもとで、Cell BE搭載ブレードの開発、提供、およびソフトウェア最適化などの側面で協力体制を敷いている。また、アミューズメント業界以外で唯一、Cell BEプロセッサの評価システム(Cell Technology Evaluation System:CTES)を提供している企業でもあるという。IBMが2006年第3四半期に発売を予定しているBladeCenter向けのデュアルCellブレードは、マーキュリーとの共同開発製品である。
セミナーには、同社とパートナーシップを結ぶ日本IBMのディスティンギッシュトエンジニアである中野宏毅氏がゲストに招かれ、Cell BEの特徴紹介が行われた。
ワンチップで256ギガフロップスというスーパーコンピュータ並みの浮動小数点演算性能を誇るCellには、64bitのPowerPCコアと、グラフィック処理やベクトル計算を受け持つ8基のシナジスティックプロセッサエレメント(SPE)が搭載されている。中野氏は、Cellの特徴として、マルチコアによる高い並列処理性能、高いメモリ帯域、高度なリソース配分やキャッシュのロック機能などによってもたらされるリアルタイム処理性能、さらにはゲームに限らず広範な分野のアプリケーションに対応できる柔軟性などを挙げた。
「Cell BEでは、多くのアプリケーションで従来のプロセッサの10倍以上のパフォーマンスを実現できる」(中野氏)という。
パフォーマンスのカギは並列処理
続いて登壇したマーキュリーコンピュータシステムズ、バイスプレジデントのRandy Dean氏は「マルチコアであるCell BEのパフォーマンスを最大限に引き出すためには、並列処理に関するソフトウェア開発がキーポイント」とした。Cell BEのアーキテクチャに基づいて、データ、スーパースカラーコア、タスク、DMA、システムのいずれのレベルにおいても並列化を追求することが重要であり、「マーキュリーのアルゴリズムライブラリ、ミドルウェアAPI、開発ツールは、最適な並列処理を実現するためのデザインとなっている」と、同社のこの分野における実績と技術面での優位性を強調した。Dean氏によれば、ソフトウェアの最適化によって、Cellでは最大で従来のプロセッサの100倍近いパフォーマンスを発揮することも可能という。
セミナーでは、同社が2006年3月に日本での出荷を開始したCell評価システム(Cell Technology Evaluation System:CTES)も披露された。CTESは、XeonベースのLinuxサーバにモニタとキーボード、IBM BladeCenterシャーシ、デュアルCellブレード、ソフトウェア開発環境がオールインワンになった製品であり、セッションの休憩中には、多くの参加者が担当者に熱心にこのシステムの内容を質問する光景も見られた。
また同社では、今後のハードウェア製品のロードマップとして、先述のデュアルCellブレードに加え、1Uラックマウントサーバ、省スペースを追求した“Turismo”Cellベースシステム、ヘビーデューティ用途向けの「PowerBlock 200」も紹介した。
1Uラックマウントサーバは、3.2GHzのCell BE2基、XDR DRAM1Gバイト、ギガビットイーサネットポート×2、USBポート、シリアルポート、PCI Expressスロット×2を搭載する製品で、2006年7月〜9月の発売を予定している。
“Turisumo”Cellベースシステムは、スタンドアロンワークステーション用のアクセラレータ。4基以上のCell BEプロセッサを1500cm3の筐体にパッケージングしている。冷却機構にも気を配っており、性能値としては800ギガフロップスを掲げる。さらに、6フィートラックで25テラフロップス以上、5Uシャーシ(4モジュール)では、3.2テラフロップス以上の数値を記録しているという。発売は2007年を予定している。
PowerBlock 200は、3GHzのCell BEに1GバイトXDR DRAM、4GバイトのDDR2 SDRAMを搭載。x16 PCI Express×2、ギガビットイーサネット×9、2Gビットファイバチャネル×4、シリアルポート×2といった、各種インターフェースを備える。動作温度範囲は-40度から71度と、過酷な環境下でのコンピューティングに耐える仕様となっており、2007年上半期の発売を予定しているという。