Web 2.0の世界ではおなじみのキーワードとなった「ロングテール」。Wired誌の編集長、Chris Anderson氏が提唱した言葉だ。そのAnderson氏が2月9日、米サンディエゴにて開催中のイベント「FASTfoward 07」に登場し、「ロングテール中級編」として講演を行った。
ロングテールとは、実店舗で販売されているような大衆に受け入れられる製品をヘッドとし、スペースの都合上店頭に並ばないようなその他数多くの製品をテールとした上で、オンライン上では実店舗で販売されていない商品が数多く取り扱われているため、テール部分が大きな収益源となり得ることを指摘したものだ。大衆を狙った形式をAnderson氏は20世紀のやり方だとし、「ロングテールが新しい市場を作っている」としている。
Anderson氏は、オンライン書店のAmazon.com、オンラインDVDレンタルのNetflix、音楽配信サイトのRhapsodyを例に挙げ、「売上全体のうち、実店舗では販売されていないものの売上の比率がAmazonでは25%、Netflixでは21%、Rhapsodyでは40%にものぼる」と指摘した。
ここまではロングテールの初級編として、すでに幅広く知られていることだ。中級編としてAnderson氏は、「ロングテールで重要なことは、十分な品揃えがあるかどうか(Availability)、そして欲しい商品をうまく見つけられるようになっているか(Findability)という点だ」と述べた。
ロングテールを説明するにあたってよく例に挙げられるAmazonだが、そのAmazonでさえすべてのロングテールをうまく取り込めていないとAnderson氏は指摘する。Anderson氏は、Amazonで「たまたま見つけた本」を例に挙げ、説明を始めた。その「たまたま見つけた本」とは、Anderson氏著書の「The Long Tail」という書籍だ。
同氏がその書籍を本当にたまたま見つけたかどうかはさておき、このページには本の表紙画像やページ数はもちろん、筆者のプロフィールへのリンク、編集者によるレビュー、カスタマーレビューなど、さまざまな情報が掲載されている。
一方、Anderson氏はもう一冊たまたま見つけた「The Long, Long Tail」という書籍のページを取り上げた。そこには、表紙の画像もなければ、ページ数やレビューも何もない。「オンラインでは実店舗と違い、実物を確認できないというのに、表紙の写真がなくては正しい本かどうかもわからないし、何ページある本なのかもわからない。これでは販売に結びつかないだろう」とAnderson氏。
つまり、AmazonはAvailabilityを満たしているものの、Findabilityに問題があるというわけだ。Amazonには掲載されていないThe Long, Long Tailのレビューも、出版された当初には紹介文がどこかで書かれていたことだろうし、ページ数の情報もどこかにあるに違いない。それを「ネットワークの利点を活用して手に入れられていないことに問題がある」とAnderson氏は説明する。
ロングテールは、果てしなく長く続くテールのようにも見えるが、Anderson氏は「Amazonでさえ全在庫の10%しかこのテールの中に入っていない」と指摘する。「世界で一番とされているAmazonでさえ、まだまだテールが伸びる可能性はある。ネットワークからうまく情報を集めてくることで、数字を高められるだろう。オンラインストアで大成功を収めるには、この数字が50%になることを目指すべきだ」(Anderson氏)