サンフランシスコ--Googleは米国時間5月28日、ウェブブラウザの能力を増強する「Gears」プロジェクトの新しい可能性を示すワーキングプロトタイプを披露した。
Googleが2007年に「Gears」を発表したとき、同社は1つの重要な機能をあまりに強調しすぎた。それは、ブラウザがインターネットに接続されていないときにもウェブアプリケーションが動作することであると、Gearsを主導するエンジニアであるChris Prince氏は、28日に当地で開催された「Google I/O」カンファレンスの講演で述べた。しかし、新しい機能は劇的に異なる方向に向かっている。それは、各種のイベントのデスクトップにおける通知、場所情報のサポート、コンピュータのファイルシステムとの相互作用の改善、ネットワーク接続の一時的な切断によって障害を受けた場合にも大きなファイルのアップロードの手続きをスムーズに進行させる技術などである。
同時にGoogleはオープンソースのGearsプロジェクトにも取り組んでおり、競争相手のYahooも同様の取り組みを開始し、今週「BrowserPlus」のソフトウェアを発表した。これらの動きは、インターネットの巨人たちがインターネットの基本的な構造をより活気ある方向に導こうとしていることを示している。
「人々はブラウザが多少は壊れていることに気づいていると思う」とPrince氏は講演後のインタビューで述べた。「われわれの多くはそれを改善しようとしている」(Prince氏)
このプロジェクトは当初「Google Gears」という名称だったが、Googleは28日、プロジェクト名からGoogleの名前を外した。これはプロジェクトが単にGoogleだけの取り組みではないことを示すためである。MySpaceはこのカンファレンスでメールシステムにGearsを採用することを発表した。
Prince氏は、これらの新しい機能がGearsに取り込まれるかどうかについて明言を避けたが、ウェブアプリケーションで実現可能なことについてGoogleが大きな野心を持っていることは明らかである。「われわれは、ローカルマシンの能力を解き放つことによって、ウェブアプリケーションがデスクトップアプリケーション並にパワフルになるようにしたいのである」(Prince氏)
Prince氏はGearsの5つのプロトタイプを実演した。
- 1つは、ウェブページのショートカットアイコンをコンピュータのデスクトップに作成して、ユーザーが複雑な手順を踏まなくてもダブルクリックするだけでそのウェブアプリケーションを起動できるようにするもの。
- YahooのBrowserPlusの機能のように、コンピュータの一般システム通知機能と連携した通知プロセスは、ウェブアプリケーションがデスクトップアプリケーションのようにユーザーの注目を集める上で欠けていた大きな部分である。「ウェブアプリケーションには、システムに重要なことが起こっているときにユーザーにそれを通知できないという問題がある」とPrince氏は指摘した。
- Prince氏のファイルシステムのデモでは、今日のウェブサイトの運営で悩みの種になっている1回に1つずつしかファイルをアップロードできないのとは異なり、アップロードの対象として多数の写真からなる大きなグループを選択できるダイアログボックスが表示された。
- 例えば、「ブロブ」処理機能を使用して大きなファイルを小さなサイズの小片に分割することができる。このアプローチによって、ネットワークの接続状況が悪いときに中断されたアップロード作業を回復することがさらに容易になる。
- Prince氏は、ジオロケーション(地理的位置決定)処理機能を使用して緯度経度の情報を処理し、サンフランシスコのモスコーンセンターの近くにあるバーの所在地を表示する、より便利なGoogle Mapsを実現してみせた。
しかし、ウェブサイトと地理情報を共有する場合にはGearsはやはりプライバシーを処理する必要があると、Prince氏は付け加えた。「場所のデータを使用するには許可がなければならない。われわれはそのための最善のモデルをまだ考案していない」(Prince氏)
そして、Prince氏は実演はしなかったが、Gearsにウェブカメラやマイクロフォンを組み込む技術を開発中であるとも述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ