急速に発展しているウェブコーディング標準「HTML 5」を管理するGoogleの従業員は、HTML 5で「Ogg Theora」を動画コーデックとして策定しないことが決まったと発表した。
Ian Hickson氏は米国時間6月29日、Appleの反対により仕方なくオープン標準のOgg Theoraを外したと書くとともに、競合するH.264コーデックについても、他のブラウザベンダーの反対により仕様に含めない可能性があることを明らかにした。これはつまり、HTML 5がウェブ開発のための動画コーデックを1つも策定しないことを意味する。
HTML 5の重要な機能の1つは、
だがHickson氏は、HTML 5の開発作業を進めている企業連合Web Hypertext Application Technology Working Group(WHATWG)のウェブサイト上に、「すべてのベンダーが進んで実装や公開を受け入れる適当なコーデックはない」と書いた。
「したがってHTML 5の仕様では、コーデックが必要になっていたであろう2つの小区分を削除し、この問題を未定義のまま残した。過去に、IMGタグや画像形式、
Hickson氏によれば、Appleは「ハードウェアサポートの欠如と不明瞭な特許環境」を理由に、「QuickTime」ビデオにOgg Theoraを実装しないという。ただし同氏は、Ogg Theoraの評価において状況を単純化し過ぎていたかもしれないと認めた。ZDNet UKはこの件についてAppleに確認と説明を求めたが、記事執筆時点で回答は得られなかった。
Googleは、「Google Chrome」でH.264とOgg Theoraの両方を実装している。だが同社は、H.264コーデックのライセンスをChromeのLinux版である「Chromium」のサードパーティのディスリビューターに提供できないほか、Ogg Theoraの1ビット当たりの品質がまだYouTubeの処理量に対応できるほどではないと考えている、とHickson氏は説明した。
Mozilla(6月30日にリリースした「Firefox 3.5」でOgg Theoraを実装した)とOperaは、特許やライセンシングの問題によりH.264を実装する予定がなく、一方Microsoftは「
Hickson氏は、2つの将来のシナリオを示した。1つは、特許に関するAppleの懸念が和らぐほどOgg Theoraのサポートと使用が拡大する場合で、このケースではTheoraはウェブ用動画コーデックの事実上の標準となる。もう1つは、関連するH.264の特許が失効し、標準が自由に利用できるようになる状況で、この場合はH.264が事実上の標準となる。
「音声コーデックの状況も似たようなものだが、動画コーデックより多くの形式が存在するので、重要性はより低い。音声のプロファイルは動画のプロファイルよりはるかに低いため、特定のコーデックを求めるのではなく、音声機能を観察したうえで共通のコーデックが浮上するのかどうかを見守る方がいいと考えている。将来、共通のコーデックが現れた時に、この件を議題として再び取り上げるつもりだ」(Hickson氏)
Hickson氏はウェブサイトの中で、HTML 5における動画コーデックの状況は「信じがたいほど遺憾」であり、「仕様の策定としてはひどい状況だ」と書いた。「こうした泥沼のこう着状態ではなく、良い解決法が得られたらと願っている」
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。原文へ