日本オラクルは6月2日、新会長ならびに新社長の就任会見を行った。これは、6月1日付けで、新会長に前社長の新宅正明氏、社長および最高経営責任者に遠藤隆雄氏が、それぞれ就任したのに合わせたものだ。
遠藤氏は「日本IBMを退社してから9カ月間、この日が来るのをワクワクして待っていた」と切り出し、「これまでの日本オラクルの第1巻は、すばらしい成果を挙げたといえる。日本の社会の一員として、日本に根付いた基盤を作り上げた。そして、今日から、オラクルは成長に向かい、第2巻が始まる」と宣言した。
遠藤氏は、オラクルのこれまでの取り組みについて「データベースを中心とした企業」と位置づけ、「データベースの領域においては高い評価を得ている。技術者のコミュニティを作り上げ、ビジネスパートナーにも支えられた」と評価する。
「第2巻ではデータベース事業に加えて、SOAプラットフォーム、ビジネスアプリケーションにも注力したい」(遠藤氏)
遠藤氏は「オラクル第2巻」の背景を、企業経営者の視点と、オラクル自身が置かれた立場から説明した。
企業経営者の視点では、「業務プロセス全体のデザインを決められない企業の存在」「変えたくても変えられないシステムの存在」「変化に対して人の意識が変わらない」という3点をあげ、「前者2点については、オラクルが解決策を提示できる。過去の成功体験、過去に構築された情報システムを打ち壊せないという問題に直面している企業に対しては、ビジネスアプリケーションのソリューション、そしてグローバルな標準ともいえるビジネスプロセスをオラクルは提供できる。顧客のアイデアを創出し、イノベーションに弾みをつけることができる。また、SOAプラットフォームは業務プロセス同士をつなぎ、システムの変化に柔軟性を持たせることができる。この両方を提供できるのはオラクルだけだ」とした。
また、オラクル社内の要素として「BEAの買収などによってビジネスアプリケーションをはじめ、幅広い製品領域を持つ企業となった。長期的にソリューションを提供する企業となることが求めれ、そのためにはグローバルとの連携が大前提となっている。グローバル戦略に則った形で、製品に対するコミットメントを行い、信頼される企業を目指す。だが、その一方で、製品単体の価値ではなく、コンサルティングやサービス、営業といったクロスファンクションによる価値を提供していく必要がある。そのためには、ローカルにおけるインテグレーションが重要になる。このグローバル化、ローカル化の2つの観点で取り組んでいくのが、オラクルの進化論となる」と語った。
遠藤氏は、1977年に日本IBMに入社以来、同社を退職した2007年8月まで、長年に渡り、サービス事業を中心に担当してきた経歴を持つ。
「変化を起こすコアは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)にある。改革は、業務ソリューションだけでは難しい。だが、それを提供する側でやるのか、違うところでやるのかが、オラクルか、IBMかの違い。グローバルなワンカンパニーとしての役割が求められるという点では、オラクルもIBMも一緒。だが、日本オラクルは外資系企業としては数少ない東証一部上場企業。日本流のやり方があるのではないか。そこに違いがある」(遠藤氏)
さらに、趣味だという囲碁を引き合いに出し「囲碁で使われる『大局観』と『布石』という言葉が好きである。細部にこだわらず、一歩下がって、全体を見渡し、大局観を持って仕事をしてきた。大局的に見た上で、次の一手を打っていく。囲碁とビジネスには共通するところがある」などと述べた。
一方、新会長となった新宅氏は、「これまでの18年間の日本オラクルは、第1巻として、いったん終わる気持ちでいる」と述べた。遠藤氏と同じ言葉で、18年間を振り返り「社長として務めた8年間も、様々なことが起こった。だが、ここで新たなグランドデザインを描く必要があり、次の世代のオラクルのブランドイメージを作る必要がある。そのためには、次の世代のオラクルを鳥瞰できる能力と経験が必要と感じた。実績を持ち、リーダーシップを発揮できる遠藤さんを、確信を持って社長に推薦した。リーダーとしての制約は何も設けていない。新たなオラクルのリーダー像を存分に発揮してほしい。いかなる方針も信頼している」とし、遠藤氏の経営手腕に、全幅の信頼を寄せていることを強調した。