富士通、取締役人事を発表--秋草氏の取締役退任は「予定通り」

冨田秀継(編集部)

2010-03-24 20:08

 富士通は3月24日、取締役相談役の秋草直之氏の取締役退任を含む取締役人事を発表した。6月21日に開催される予定の定時株主総会を経て、同日付で正式に決まる見込み。

 同社は現在、前社長の野副州旦氏から社長辞任の取消を求められている。富士通は野副氏の辞任理由を当初の「病気療養」から一転、「好ましくない風評」(富士通)がある企業グループと付き合っていたためと説明。辞任理由を事実上撤回していた。これを受け東京証券取引所は、代表者の異動の説明について適切さを欠くとして厳重注意を行っていた。現在は双方の弁護士が水面下で話し合いを続けている模様。企業統治と投資家への適切な情報開示で揺れる富士通では、4月1日に山本正已新社長が誕生する。

秋草氏の取締役退任は「予定通り」

秋草直之氏(画像は2007年取材時のもの) 秋草直之氏(画像は2007年取材時のもの)

 秋草氏は6月21日付で取締役を退任し、相談役には留まる。富士通によれば2月上旬、秋草氏が代表取締役会長兼社長の間塚道義氏に辞任の意向を示した。野副氏が辞任取消を求める文書を間塚氏ら14人に送付したのは2月26日。この動きよりも前に意向を示していたという説明で、野副前社長の一件とは関連がないとする。

 さらに、富士通の説明によれば、元社長の黒川博昭氏が辞任して野副氏に交代するタイミングで、当時会長だった秋草氏が社内外の人的交流等を新社長に引き継ぐため、1年間の引き継ぎ期間を設け、2009年6月に退任する予定だったという。しかし、リーマンショック後に経済不況が深刻化。2009年6月の株主総会では当時社長だった野副氏が、秋草氏にもう1年残ってほしいと株主に訴えたという。この野副氏の発言の背景には、経済不況に加えて、2008年度決算が赤字だったことも要因の一つだった。そして、株主総会から1年後の2010年6月、秋草氏は取締役を退任する。富士通 広報IR室では「予定通りの退任」と述べている。

 秋草氏は富士通で代表取締役社長、同会長を歴任。過去には経済団体連合会(経団連)で評議員会の副議長を務めていた。現在は同社取締役相談役のほか、経団連の電子行政推進委員会で委員長を務めている。6月以降は「執行責任を負う経営陣が相談を求めれば、必要に応じて助言する」(富士通)相談役の立場として富士通にかかわる。

間塚氏と大浦氏は取締役重任

 こうした一方で、間塚氏は代表取締役会長に就任する。また、現取締役でアドバンテスト相談役の大浦溥氏と、社外取締役で富士電機ホールディングス取締役相談役の伊藤晴夫氏が取締役に重任する。

 新任の取締役では、次期社長の山本氏が代表取締役社長に就任する。社長を補佐する5人の副社長のうち、執行役員上席常務の石田一雄氏と執行役員常務の藤田正美氏が取締役執行役員副社長に就く。また、同社生え抜きの加藤和彦氏と、通商産業省(当時、現在の経済産業省)出身で、2007年7月から2008年7月まで特許庁長官を務めた肥塚雅博氏も取締役に就任する。

 新任の社外取締役には、一橋大学大学院 教授で商船三井で社外取締役を務める石倉洋子氏と、慶應義塾大学 教授で同大法学部長兼大学院法学研究科委員長の国分良成氏が就任する。石倉氏は戦略コンサルタントとしての実績が豊富なこと、複数の企業の社外取締役などを経験していることが選任の決め手になった。国分氏はグローバルの政治経済に詳しく、見識を生かした助言を求め選任に至ったという。

 退任する社外取締役は、一橋大学 名誉教授の野中郁次郎氏と、早稲田大学大学院 公共経営研究科 教授の北川正恭氏。両者ともに本人から退任の意向が示された。

 今回のこの一連の人事は、同社の指名委員会が提案し、24日の定例取締役会で内定した。委員会は2009年9月に野副氏が突然辞任したことを受け、10月28日に設立された。委員長は大浦氏、委員は間塚氏と野中氏で、次期社長の山本氏も委員会が選出している。富士通によれば、今回の人事では委員会での討議だけでなく、大浦氏を中心に周囲の人からも助言を受けたという。

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