富士通前社長の野副氏が記者会見:当初は法的措置を検討していなかった

冨田秀継(編集部)

2010-04-08 01:13

 富士通に社長辞任の取り消しを求めている野副州旦氏が4月7日、都内で記者会見を開き、辞任に至る経緯と自身の主張を公の場で述べた。双方の弁護士が水面下で話し合いを続けてきたが、交渉は決裂した。

 野副氏は、自身が詐欺および脅迫によって富士通から排除されたことで同社に損害が発生しているとし、これらの損害のうち子会社ニフティの再編について、会社法847条1項に基づき株主代表訴訟で約50億円の損害賠償を請求したことを明らかにした。また、個人の損害として、今回の退陣を主導した役員や幹部社員など数名に対して、損害賠償と名誉回復を求める予定だ。

「富士通を心から愛している」が故の行動

野副州旦氏 野副州旦氏

 野副氏は会見の冒頭、「今までこのように育ててもらった富士通を心から愛している。これからも将来に渡り、グローバルに強い会社へと成長してほしい、発展してほしいと願っている。今回のことは、この思いの延長線上にあるということを前提にお話しさせて頂く」と述べた上で、「一連の行動は私自身の名誉回復が大前提。会社のトップが、ねつ造された虚構の理由によって密室で解任されるという異常な事態が起こるということを、富士通がグローバルで成長していくために、二度と起こしてはいけないため、こういう機会を設けた」と語った。

 野副氏は一連の問題のポイントを四つにまとめて説明した。第一のポイントは、退陣に追い込まれた場が取締役会ではなかったこと。野副氏側は、辞任要求を受け入れた後で取締役会において弁明の機会は与えられていないとしている。これを密室での解任であると主張し、「もしも私に対して疑義があるのなら、取締役会で議論を尽くすべきだ」と述べている。

 第二のポイントは、調査資料の信用性だ。「つい最近になって辞任に追い込まれた理由となる調査資料なるものを見ることができたが、内容は全く不可解なものだった」と野副氏。「富士通は『一部報道について』(と題する公の文書)で、(野副氏が)何らかの違法行為や不正行為を行っていたわけではないことを発表した。それならば何故、辞任しなければならなかったのか。常識的に納得できる理由を、証拠とともに明らかにするべきではないか」と野副氏は語る。その理由は「確たる証拠もなく辞任に追い込まれては、社長という立場が非常に危うくなり、会社の経営に専念することなど到底できない」という危惧を抱いたからだ。

 第三のポイントは、情報公開に関する疑念。「一部報道について」では、取締役監査役が好ましくない企業と付き合わないよう野副氏に注意したところ、野副氏がそれを認め、当該企業を同社のプロジェクトから外すことを明言したと記載されている。しかし、野副氏は「私は注意を受けたことが全くございません。誰が、いつ、どこで、どのように、なんと言って注意したかと問えば、(富士通は)答えることができないはずと確信している」と述べる。野副氏は、当該企業はそもそも富士通のアドバイザーではなく、相手方企業のアドバイザーであり、富士通としてはその任を外す立場にないとも指摘している。

 第四のポイントは、富士通が野副氏と顧問契約を結んだことだ。野副氏によれば、9月25日に辞任を求められた場で、すでに顧問契約書が用意されていたという。契約内容は、今後約10年にわたり相談役として業務を行い、報酬を支払うというもの。野副氏は「反社会的企業と付き合いがあると断定しながら、なぜ私と顧問契約を結び、報酬と一部の交際費等を提示したのか。この条件の提示は(富士通が)事実を隠ぺいしようとする意図を強く感じさせる」と述べている。

野副氏側は法的措置を検討していなかった

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