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「スピードこそが付加価値だ」--日本開閉器工業の事業改革

大川淳
2007/11/21 15:26

 日本オラクルは東京・港区で、「中堅企業向けイノベーション・サミット〜成功事例に見るビジネスとITの融合」を開催した。「中堅企業の変革、およびその中でITがどのような役割を果たすべきか」との課題を提起し、中堅企業が、迅速、容易に導入できるソリューションや、これまでの成功事例を紹介した。基調講演では、日本開閉器工業の大橋智成社長が「Great Small Company:スイッチで世界No1を目指す企業を支えるIT基盤とは」との表題で、同社の事業改革の経験に基づいた、経営へのIT活用の実践を論じた。

 日本開閉器工業は、産業用スイッチの開発、製造、販売の専業メーカーで、この分野では、国内シェア第1位だ。売上高(2007年3月期 連結)は89億円、従業員数は単体で219人、グループは416人、国内2ヶ所のほか、中国広東省にも生産拠点をもつ。営業拠点は国内4ヶ所とともに、米国、香港、中国にも設けている。現在、取り扱っている産業用スイッチの種類は300万種を超え、宇宙衛星機器からコンピュータ、放送音響機器、FA自動化機器、航空、鉄道、船舶、医療、防災、制御機器、建設、移動体通信、アミューズメントに至るまで、あらゆる産業分野に製品を供給している。1988年に株式を公開、現在、JASDAQに上場している。創業は1951年4月、会社創立は1953年12月だ。

 スイッチは、家電品であれ、産業用製品であれ、ほとんどの機器には欠かせないものだが、医療用機器などの場合、on/offがうまくいかなければ、人の生命にかかわることから「産業用スイッチは民生用以上に品質が重視される」(大橋社長)ことになる。扱う産業の領域が広いゆえに、製品は300万種以上に及び、部品点数はその10倍、3,000万超になるという。

 同社の「システム開発の原点」(同)は1986年だった。「当時、NECのホストコンピュータを用い、独自で、生産管理システムを一から開発した」。このときから稼動を始めた「NICEシステム」は、1999年に刷新された後、2006年に大きな岐路を迎えた。「かつてのホストでもオフコンでもなく、PCサーバーを使ってシステムを構築した」

 同社はこの「4年前に、中期経営計画を策定、システムの変革を目指した」(同)。大橋社長は「会社設立から50年、品質と技術力により、産業用スイッチでは、日本でナンバーワンに登りつめた。では、いかにして、世界一になるか。その要件の一つはシステム開発だと考えた。当然、品質と技術はなおざりにできない。そこに付加価値が必要になる。それは、スピードだ」と話す。というのも「かつての高度成長時代やバブル期には、莫大な需要があり、供給側のほうが小さかった。いまでは、それが逆転している。小さな需要を巡って、供給者が大きくなって、食い争っている。納期の短縮化、スピードが重要だと強く感じた」からだ。

 ある製品について、同社も競合もすべて、納期がたとえば1ヶ月であれば、競合に勝ち抜くためには、価格のたたきあいになり、利益は低下する。「納期が競合と同じでは、利益を圧迫することになる。利益を確保するには、競合より納期を短くしなければならない。スピードを早くするしかない」

 同社は「スピード化」対策のため、それまでの受注生産方式を計画生産方式に切り換えることを決めた。製品の受注数量、月間の受注先、受注回数の多寡により、製品を区分、売れ筋商品の上位60%は、受注後、即時納入できる態勢を目指し、2006年には「NEEDS(NKK Evolution to Ensure Delivering Satisfaction)」と呼ばれる新システムが稼動を開始した。確実にユーザーを満足させる革新型システム、との意味を込めている。同社は、ここに、ERPパッケージを採用、日本オラクルの「JD Edwards EnterpriseOne」を導入した。「パッケージ、自社開発、どちらにしようかと思案したが、日本から世界に飛び出すには、世の中の風を感じた方が良い。外の空気を吸ってナンバーワンに近づきたい」との思いで、パッケージを選択した。「JD Edwards EnterpriseOne」の日本国内での導入実績や、多通貨/多言語など、グローバル対応、基幹業務プロセスの一元管理が可能な点などを評価した。

 「ここまで来るのはたいへんだった」と大橋社長は振り返る。それまでの受注生産方式で、特別問題があったわけではない。うまくいっているものをなぜ変えるのかという抵抗が社内であった。しかし「この会社の20〜30年後を考え、世界一を目指すには物足りなさを感じた。いまのシステムでは、日本一にまでしかなれない」と判断、改革に踏み切った。

 とはいえ、トップダウン方式で、ことを進めたわけではない。同社は、システム移行/稼動までの日程を、第1フェーズ(あるべき姿の策定)、第1.5フェーズ(検証)、第2フェーズ(設計、開発局面)として、計画を実行していった。「第1と第1.5フェーズに重点を置いた。社員に、あるべき姿を考えさせ、提案させようと考えた。『ITニュース瓦版』をつくったり、認知度向上のためのキャンペーンも打った。コンサルタントの協力も得たが、社員主導の理想像ができた」。さらに、検証の段階でも、合宿形式で知恵を出し合った。

 従来のシステムは「生産計画、販売、会計、それぞれが分断されており、本社と支社の間でも分断されていた。しかし、ERPは、すべてが会計に結び付けられる。これは大きな違いだった」。新しいシステムは「2009年3月期に、あるべき姿にもっていきたい」。

 大橋社長は「ただ単に売上げを伸ばそうというのではない。中堅企業が大手に勝っていくのは生易しいことではないが、大が小を食うということもそれほど考えていない。中堅企業が勝ち残るには、付加価値を高めることが勝負の分かれ目だ。荒れ狂う市場で、存在価値を大きくすることが重要になる」と結んだ。


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