独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は7月19日、2004年10月から実施している教育現場でのオープンソースソフトウェア(OSS)活用の実証実験の成果を公開した。
実証実験は、学校の授業や教師の仕事などにおいて実際にLinuxを使って、使い勝手やアプリケーションのの動作状況を確認、遠隔地からのシステムの保守作業も実施して、OSSの有効性を検証するためのもの。(1)Linux専用デスクトップPCを利用、(2)1枚のCD-ROMから起動できるLinux「KNOPPIX(クノーピクス)」--の2件が実施された。
(1)のLinux専用デスクトップPCの実験は、2004年10月から2005年5月までに茨城県つくば市の小中学5校、岐阜県の小中学3校、埼玉県の大学1校、生徒数にして3089人が参加。利用されたPCの台数は307台、基本ソフト(OS)はサン・マイクロシステムズの「Sun Java Desktop System」とターボリナックスの「Turbolinux 10 Desktop」。
実証実験を振り返って、IPAの秋間升参事は「生徒たちはOSの違いを意識せずにLinuxに順応しており、教師の80%以上がLinuxを授業で使っても支障はないと回答している」と説明し、Linux PCが教育現場で実用できることが実証されたとしている。秋間参事によれば、今回の実証実験を契機に、岐阜大学付属小学校では、ライセンス料が無償であり、コスト削減が大きく実施できるという点に魅力を感じて、PC教室にあるPCをすべてLinux PCに置き換えたという。
(1)の実験には、三菱総合研究所をはじめとする民間企業9社が参加。そのうちの1社である日本IBMは「クラスルームPC管理ソフトウェア」を開発。同ソフトを利用すれば、例えば、翌日の授業で使う教材を、参照用PCから教室にあるPCすべてにコピーすることができる。このソフトを使ったことで、教員からは「PCを管理する負担を軽減できたとの声が上がっている」(秋間参事)という。
(2)のKNOPPIXを利用した実験は、2005年1〜6月に実施され、小学校、高校、専門学校、大学など8校、673人が参加。既存のPC環境の上でKNOPPIXを利用、トラブルなくKNOPPIXに置き換えられるかどうかなどを検証した。
今回採用されたKNOPPIXには、無償のOSSを中心に授業内容にあわせたアプリケーションが組み込まれている。またKNOPPIXが収録されたCD-ROMとUSBメモリーがあれば、自宅でも学校と同様のPC環境が構築可能。
IPAは「教師、生徒はともに短い説明をするだけで初回の授業からKNOPPIXを使っていた」「Windowsを使っていた生徒は、ログインや日本語入力を習っただけで、Windowsを使うのと同じように操作していた」という実例を挙げて、WindowsからKNOPPIXの移行に伴う負担は軽いと分析している。
IPAでは、今回の実験に参加した教師や生徒の声をまとめて、障害事例などを分析したうえで、教育機関向けの導入検討資料やマニュアルなどを整備する。また、実証実験の作業記録やPCの障害記録を分析して、システム構築事業者向けに導入ガイドなどを整備する予定。