口座預金を略奪するトロイの木馬がまん延--セキュリティ研究者が注意を呼びかけ

文:Joris Evers(CNET News.com)
翻訳校正:尾本香里(編集部)

2006-02-20 12:55

 カリフォルニア州サンノゼ発--サイバー犯罪者がユーザーとともにオンラインバンキングを利用し、口座の金を盗むという事態が起こっている。

 以前は、パスワードを盗むトロイの木馬が大流行していた。このトロイの木馬は、ユーザーが悪質な電子メールの添付書類を開いたり、悪質なウェブサイトを閲覧したりすることで、PCに侵入する。だが、堅牢な認証システムが普及したことに伴い、サイバー犯罪者は戦略を変えつつあると、MessageLabsのウイルス対策シニアテクノロジストAlex Shippは述べている。

 Shippは米国時間2月16日、当地で開催された「RSA Conference 2006」において、「最近では、ユーザー名やパスワードの盗難は減少している」と発言した。代わりに、「(口座から金を盗む目的で作成された)トロイの木馬」が、ユーザーがオンラインバンキングを利用するのを待ち受けるようになり、「金を外部へ送金している」のだという。

 「いかなる認証システムが導入されていようと、ちょっとした仕掛けが施されていようと、生体認証が適用されていようと、役に立たない。犯罪者はユーザーを待ち伏せて、口座預金を盗み出している」(Shipp)

 Shippによれば、こうした新種のトロイの木馬は現在増加傾向にあり、まん延している脅威の中でも3番目に多いものになっているという。なお、今日最も一般的である脅威は、ゾンビPCのネットワーク(ボットネット)を形成するのに悪用されるリモートコントロール可能なコードで、その次に多いのが、コンピュータユーザーをだまし、個人情報を提供するよう仕向けるフィッシング詐欺だと、Shippは話している。

 口座の金を盗むトロイの木馬は、特定のオンラインバンキングサイトと連動するようにプログラムされている。「犯罪者は、標的とする銀行の数を増やし続けている」(Shipp)

 このトロイの木馬は、電子メールに含まれるリンクとしてユーザーのPCに侵入することが多い。こうした電子メールには、例えばオンライングリーティングカードのような、一見無害と思われるサイトへのリンクが含まれている。「リンクをクリックすると、ブラウザに自己をインストールする実行ファイルがダウンロードされてしまう。このプログラムはその後、ユーザーがオンラインバンキングを利用するまで身を潜めている」(Shipp)

 ShippとともにRSA Conferenceのパネルディスカッションに参加した、Boeingのセキュリティシステム担当シニアプロダクトマネージャJeanette Jarvisは、日増しに進化する攻撃に遅れを取らないようにするのは非常に難しいと語った。「昨今は攻撃手法にソーシャルエンジニアリングが取り入れられるようになり、社員は何をしてよいのか、あるいは悪いのか、区別するのがきわめて困難になっている」(Jarvis)

 Jarvisによると、Boeingがゲートウェイ部分で遮断した悪質なソフトウェアの数は、2002年以来1万1000%も増加したという。中でも、フィッシングが特に大きな問題になっているそうだ。「こうした問題に対する万能策はない。ある攻撃を食い止める手段を考え出すと、犯罪者はすぐに次の手を打ってくる」(Jarvis)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]