Microsoftが最近行った企業買収からは、同社がセキュリティ分野に力を入れようとしていることが分かる。だが、一部のアナリストは、Microsoftがより明確で生産的な戦略を打ち出す必要があると指摘している。
Microsoftは3年前、Trustworthy Computing Initiativeを立ち上げた際に、今後はセキュリティを最優先としていくと述べていた。以来同社は、セキュリティを強化するため社内の開発業務を見直し、関連する作業に380億ドルの資金を投入してきた。また、すでによく知られているとおり、Microsoftはこのところ、継続的にウイルス/スパイウェア対策企業やその他のセキュリティ技術の買収を行っている。
ワシントン州カークランドで活動するDirections on Microsoftの主任アナリストMichael Cherryは、「一連の買収そのものが盛んに取り上げられているが、より重要なのは、そうした買収をどのようにとらえるかということだ。わたしは、これまでの買収で、Microsoftが大きな見返りを得たとは考えていない」と述べた。
アナリストらはさらに、Microsoftは、手当たり次第に取得してきたテクノロジーを実際の製品に適用し、顧客が利用できるようにしなければならない時期に来ていると話している。
Microsoftは米国時間20日、メッセージングセキュリティサービスのプロバイダであるFrontBridge Technologiesの買収を発表した。同日にはこのほかにも、MicrosoftがFinjan Softwareに出資し、ウイルスやスパイウェアの振る舞いをもとに、これらを検知する技術に関する特許ライセンスを取得したことが明らかになっている。
Microsoftはこれらの買収以前にも、2年前にはルーマニアのウイルス対策ソフトウェア開発企業GeCad Softwareを、2004年末にはデスクトップ向けスパイウェア対策企業Giant Softwareを、2005年に入ってからは企業セキュリティソフトウェアベンダーSybariを、それぞれ取得している。Sybariのソフトウェアは、複数のエンジンを利用して、電子メールやインスタントメッセージにウイルス/スパムが含まれていないかスキャンするものだ。
Spire SecurityのリサーチディレクターPete Lindstromは、一連の買収は無作為なものに見えると発言している。「Microsoftの買収は、反射的な行動であるように思う。顧客にとって重要だと考えるセキュリティ製品を買い漁っているのだ。そこに明確な戦略が存在しているとは考えられない」(Lindstrom)
一方、Microsoftのセキュリティビジネス&テクノロジー部門ディレクターAmy Robertsは、Microsoftではユーザーに安全なコンピューティングエクスペリエンスを提供しようと全社を挙げて取り組んでおり、同社のすべての製品グループがこれに関わっていると、電子メールの声明に記している。「Microsoftはセキュリティ分野における買収を通して、革新性の向上やユーザーへの情報提供、他社との提携などに対する投資を継続してきている」(Roberts)
Microsoftは、同社が進める取り組みTrustworthy Computingを通して、初めて自社製品にこうしたセキュリティ指向の設計を取り入れた。買収を繰り返すことで、Microsoftはセキュリティ市場における存在感を示し、個人および企業ユーザーを保護する新たな製品を提供しようとしてきた。同社の最終的な目標は、Microsoftは安全性の低いソフトウェアを提供しているという認識を覆すことであると、Cherryは示唆する。また、「Windowsを選択したユーザーが、安全なシステムを購入したと確信できるようにする」ことだと、同氏は述べる。