Adobe Systemsは米国時間2月25日、「Adobe Integrated Runtime(AIR)」を正式にリリースした。これについて、早くもセキュリティコミュニティーで懸念の声が上がっている。
以前は「Adobe Apollo」と呼ばれてきたAIRはランタイム環境である。このランタイム環境によって、開発者はHTMLやFlash、Ajax、Flexなどのツールを使ってデスクトップアプリケーションを構築できる。Nickelodeon Onlineなどがすでに、AIRを利用したアプリケーションを提供している。
だがセキュリティ専門家は、AIRアプリケーションによるローカルファイルへのアクセスに懸念を示している。Firefoxも先ごろ、攻撃者が標的にしたファイルシステムに遠隔からアクセスできる脆弱性を指摘されたところだ。このような懸念を緩和するため、Adobeはサンドボックス環境を実装している点を強調しているが、Adobeのドキュメンテーションでは、このサンドボックス環境はウェブブラウザのサンドボックスほど安全ではないと説明している。
Adobeはさらに、AIRアプリケーションはデジタル署名が必要と説明しているが、この認証手法では自己署名することが可能だ。それだけではなく、多くのユーザーが警告を無視して信用できないアプリケーションを動かすことが予想される。
また、クロスサイトスクリプティング(CSS)、SQLインジェクション、ローカルリンクインジェクションの可能性もある。これらの脅威はAIRに限ったものではないが、開発者は保護機能が弱いAIRのサンドボックスのみに依存しているうちに、間違ったセキュリティ感覚を見につけてしまう可能性がある。
Adobeでは、「Introduction to AIR security」という説明的な記事と「AIR Security」というホワイトペーパー(PDFファイル)を公開している。しかし、SANS Internet Storm Centerに掲載されたレポートで、著者のLenny Zeltser氏は、「多くの開発者がAIRのセキュリティのベストプラクティスを知らないか、または故意にショートカットしてエンドユーザーを危険にさらすか、どちらかだろう」と予想している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ