クラウドベースの「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」は、2009年12月第2週に2件のアクシデントに振り回され続けた。1件は内部サービスを悪用してボットネットを構成する事例が見つかったことで、もう1件はバージニア州にあるデータセンターの停電だ。
CAからセキュリティ調査を請け負っているHCL Technologiesは米国時間12月9日、ハッカーがEC2上にあるサイトに侵入して、それを自前の指揮統制(C&C)拠点として悪用できるようにした後に、銀行情報を盗み取ることで悪名高いトロイの木馬「Zeus」の変種がクライアントコンピュータに感染していたことを発見した。
HCLで脅威調査担当ディレクターを務めるDon DeBolt氏は、CNETの取材に対して、同社がスパムの調査で「xmas2.exe」というマルウェアのURLを含むスパムを見つけたとき、このボットネットが最初に明らかになったと語った。このxmas2.exeについては、CAのブログに説明がある。DeBolt氏は、このファイルを調べた後、それがZeusの変種であり、EC2をホストしているAmazon Web Services内部のコンピュータを呼び出していることを発見した。
DeBolt氏の指摘によると、Zeusは銀行口座情報を専門に盗み取るキーロガーとして知られ、今回の変種も同様の犯罪を実行するという。このボットはまた、スパムによって汚染されたクライアントコンピュータのIPアドレスを報告しようと試みた。伝えられるところによれば、サイバー犯罪者らはAmazon EC2がホストしているサイトを通じてEC2に侵入したという。
DeBolt氏らのチームは、ボットを発見すると直ちにAmazonへ連絡して、クライアントベースの分析から得た情報をすべて提供した。それ以降、Amazon側でボットネットを構成していたファイルは活動していない。
Amazonの関係者は12月11日、コメントの要請に応じてこう述べた。「われわれは、サービスの不正使用に対するすべての指摘を極めて深刻に受け止め、それぞれを調査する。不正使用が見つかった場合は、迅速に対応してその不正使用を停止するが(中略)、今回の件でもそうした。当社の利用規定は明確であり、われわれは当社のサービスが違法な活動に利用されることのないよう、常に監視している。当社はまた、顧客のプライバシーを非常に重視しており、顧客のインスタンスを調べることはない。これは、あらゆる種類の合法な顧客がAmazon EC2上で安心して製品アプリケーションを実行できる理由の一部となっている」
DeBolt氏によると、ボットネットが見つかったからといって、必ずしもAmazonのサービスに特定の欠陥があることにはならないという。というのも、少なくとも同氏には、ハッカーがどうやってC&CファイルをAmazonのサーバに仕込んだのかが確認できていないからだ。特定のアプリケーションにあるセキュリティホールが、侵入口を開いたのかもしれない。あるいは、Zeusの別のインスタンスがログイン情報を入手して、その情報がEC2上でホストされている必要なサービスへのアクセスに利用された可能性もある。
DeBolt氏は、今回の事件がクラウドベースのサービスを利用することに対する警鐘を喚起すると考えているが、次第に一般化するこの種の攻撃がインターネットの危険な一面を表すとも感じている。
まるでボットネット攻撃に対処するだけでは不十分だと言うかのように、同じく12月9日、Amazonのデータセンターの1つが停電に見舞われ、数時間にわたってサービスが中断した。Amazonの「Service Health Dashboard」は、バージニア州北部のEC2施設で接続性と電力に問題が生じたことを報告した。停電そのものは1時間も続かなかったが、スタッフたちは顧客のサイトやインスタンスを復旧させるため、数時間にわたって作業を続けた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ