「次世代企業が企業内情報検索基盤を必要としている」理由とは?

田中亘

2006-06-12 14:00

 みずほ情報総研コンサルティング本部システムコンサルティング部マネージャー/技術士(情報工学部門)・ITコーディネーターの吉川日出行氏は、5月22日に開催された「ZDNet Japan エンタープライズサーチカンファレンス」の基調講演に登壇し、企業内情報検索基盤(ESP:Enterprise search Platform)の定義や注目が高まる背景、さらに技術的な注目点や構築における配慮などについて講演した。

ESPのイメージと構成

 吉川氏はESPを次のように解説する。「ESPは、企業内のさまざまなデータの横断的なインデックス機能と、業務アプリケーションへ組み込み可能な検索機能を持ち合わせ、認証システムと連携してサービスを提供するものである」。

 さらに吉川氏は、「ESPが求められている背景には、企業の中で情報の検索に費やされる時間が増えている、という調査結果がある。あるレポートによれば、企業の中で業務時間の7割が、目的の情報を探すために浪費されているという。この時間を短縮することができれば、業務における生産性が向上するだけでなく、業務を通して蓄積された情報の効果的な再利用が可能になる。そのためにはESPによる情報の的確な検索が必要だ」と解説した。

ちなみに、インターネットで利用されているネットサーチとエンタープライズサーチの違いは、次のとおりだ。

  • 検索対象:ネットサーチではHTMLが中心で、インターネット上に公開されているものが対象となる。画像やPDFなども検索できるが、情報の内容は玉石混合。エンタープライズサーチでは、WordやExcelといったOffice系文書が中心で、HTMLやデータベースに加えて作成途中の文書やコピーして作成したものまで含まれる。
  • 表示順と重要度:ネットサーチでは、サイトへのリンク数などが重要な判断基準となる。また、最新順やサイトの著名度なども基準になる。エンタープライズサーチでは、作成者や作成部署を重視したり、最新順や更新されたものなどを時系列で判断する。
  • アクセス制御:ネットサーチにおいてアクセス制御は基本的にない。エンタープライズサーチでは、所属や役職に役割などの権限による細かいアクセス制御が求められる。
  • 検索シーン:ネットサーチを利用するのは、何かを知りたい時が一般的になる。しかし、トライ&エラーで目的の情報が探し出せないこともある。エンタープライズサーチでは、検索だけではなくファイルの所在位置などを知りたいときにも利用される。また、答えにたどり着けなければ意味がない。
吉川日出行 みずほ情報総研コンサルティング本部システムコンサルティング部マネージャー/技術士(情報工学部門)・ITコーディネーターの吉川日出行氏

ESP構築時のポイント

 実際にESPを構築するためには、いくつかの配慮すべきポイントがある。具体的には、ゲートウェイ、アクセス制御、スケーラビリティの確保、そしてカスタマイズ対応だ。

 まずゲートウェイ機能は、社内外のデータソースから情報を取得する必要があるため、各種ファイル形式に対応するだけではなく、添付ファイルや業務アプリケーションからの検索も必要になる。中間ファイル形式を利用する場合は、できるだけXMLのようなオープンなフォーマットの利用を検討する。

 アクセス制御の方式では、Access Control List(ACL)をインデックス化するか、リアルタイム化するかの判断が求められる。高速性を優先してインデックス化にすると、ACL情報を更新するタイミングをどうするかが問題になる。

 スケーラビリティと拡張性の確保では、導入前に利用度合いを推測することが困難になるだけに、将来的なシステムの増強に耐えられるかどうかが重要なポイントとなる。

 さらに、社内の利用者が円滑に使えるようにするためには、カスタマイズの柔軟性も重要な評価のポイントとなる。

ESPの構築事例

 吉川氏は、ESPの構築事例としてウチダスペクトラムのSMART/INSIGHTを利用した社内ポータルを挙げた。

 「ESPを社内のナレッジマネジメントツールに組み込んで利用した例や、ESPの検索結果を新着情報としてポータルサイトのトップ画面に表示するなど、単なる検索ツールとしての利用ではなく、既存の環境と組み合わせることで、より積極的な活用を実現している」(吉川氏)

 またESPベンダーの動向としては、大きく3つのカテゴリに分類される。まず、デスクトップサーチとネットサーチで実績のあるグループとして、グーグルとマイクロソフト。また、エンタープライズ分野の雄として、日本IBMと日本オラクルがある。そして、検索エンジン専業ベンダーとして、アクセラテクノロジ、ジャストシステム、オートノミー、ファーストサーチ&トランスファなどがある。

 「ESPは、導入する企業のシステム環境によって、性能に差が出ることも多い。そのため、事前の技術検証やアクセス制御の定義などが、構築における重要なポイントとなる。みずほ情報総研では、ESPの基盤構築の実績があり、そうした需要に応える体制も整えている」(吉川氏)。

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