Adobe Systemsは米国時間3月17日、Microsoftが「Adobe Flash Lite」をライセンス契約したと発表した。
Microsoftは、Flash Liteと競合するモバイル機器用のリッチインターネットアプリケーション(RIA)技術「Silverlight for Mobile」のリリースを予定しているが、今回の契約により、Microsoftの「Windows Mobile」を搭載するモバイル機器のウェブブラウザ「Internet Explorer Mobile」で、Flash Liteが使用できるようになる。
3月17日の発表では、今後出荷されるWindow Mobile搭載の携帯端末に、Internet Explorer Mobile用のプラグインとしてFlash Liteと「Adobe Reader LE」をライセンス供与することが明らかになった。しかし、MicrosoftがFlash Liteの競合技術であるSilverlight for Mobileをリリースしたらどうするのかなど、契約の条件については明らかにされなかった。
Flash Liteは、大半のPCで採用されているリッチコンテンツ再生ソフト「Flash」からいくつかの機能を削ったもので、Flashを利用して制作したサイトを携帯端末でも閲覧できるようにする製品だ。Flashのやや古いバージョンだと考えてもいい。Flashの最新版「Flash 9」で作られたサイトを現行バージョンのFlash Liteで閲覧することはできないが、旧バージョンのFlashを利用したサイトならば閲覧可能だ。
スマートフォンがますます一般的になるにつれ、人々は多くの携帯電話で提供されている基本的なネットサーフィン体験では飽き足りなくなってきている。消費者が求めているのは、リッチなグラフィックスや動画を備えた、よりPCに近い体験だ。しかし、画面もメモリ容量も小さく、プロセッサの速度は遅く、バッテリ寿命の制限もあるデバイス上に同等の機能を再現するのは難しい。
そこでFlash Liteの登場となる。「過去の技術は、デスクトップ体験をモバイルデバイスに詰め込むことでモバイル業界に入っていこうとして失敗した。ユーザーが使い方を技術に合わせるのではなく、技術がユーザーの使い方に合わせなければならない」と、Adobeでモバイルおよびデバイス部門のテクニカルマーケティング責任者を務めるAnup Murkaka氏は述べている。
Microsoftでモバイルコミュニケーション事業部の製品マネージャーを務めるDerek Snyder氏もこの意見に賛成し、「どのスマートフォン上でも保証されなければならないのは、ウェブ閲覧の体験だ」と述べている。Snyder氏によると、携帯電話におけるウェブ体験を強化することに加えて、Reader LEのライセンスを通じてPDFドキュメントをサポートすることが、今回MicrosoftがAdobeと契約を結んだ動機だったという。
Flash Liteは、通常のFlashと比較した場合、Flash 9で登場した機能の多くをサポートしないことに加え、いくつか制限がある。Appleの最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏は同社の年次株主総会で、Flash Liteを見下すような強気な態度を取り、Flash Liteは「ウェブで使われるのに十分な能力がない」と述べた。Murkaka氏は、このJobs氏の攻撃的な発言に直接コメントするのは避けたが、Flash Liteは5億台のモバイル機器に搭載されて出荷されている点を強調した。
Murkaka氏は、「Adobe Flex」を使用している開発者はFlash Liteを使ったウェブページを作成できないことを認めながらも、より新しい開発ツールセットの「Adobe Creative Suite 3」ならFlash Liteをサポートしていると説明した。